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 このコラムは「記者の眼」だが、今回は記者が患者になった時の経験を書いてみようと思う。

 2021年は発作性心房細動と共に始まった。元旦に目覚めた時、「脈が速くて不規則だ」と感じた。前年の12月に購入したばかりの携帯型心電計を取り出して、胸に当て計測を開始する。約30秒記録すると「脈が不規則です。医師に相談してください」と液晶に表示される。自動解析プログラムは内蔵されているようだが、あくまで「医師の診断を受けるために心電図を記録する」目的で使う装置のため、解析結果は表示されない。心電計に記録されていた時刻は1月1日午前7時32分だった。

 正月休み開け早々に携帯型心電計を持参して主治医を受診したところ、「やはり発作性の心房細動」という診断だった。プリントした記録紙の波形を見せてもらうと、RR間隔が不規則で、P波が読み取れなくなっていた。この日からアピキサバンを服用し始め、主治医からは「コロナ騒ぎが落ち着いてきたらカテーテルアブレーションを受けませんか」と勧められるようになった。

 自分の心臓に初めて不安を感じたのはもう10年以上前のことであり、正確には何年前だか思い出せない。ある年の春の金曜日、有楽町で昼食を食べた後、「医用画像工学会」の午後のセッションを取材するために学会の会場に向かって歩いていた時のことだったと思う。歩行中に何の前触れもなく、突然心拍数が跳ね上がって苦しくなり、その場にしゃがみ込んでしまった。後で考えると、運動負荷試験を受けてエルゴメーターをこいだ時よりもはるかに心拍数が高かったので、この時は180~200回/分くらいだったのだろう。しばらく休んでいると、息苦しさはなくなり歩けるようになったが、何が起こったのか見当も付かなかった。

 その週末は、安静時なのに心拍数が100を超えているように感じられ、なかなか不安が収まらない。これは「循環器が得意分野の医師の診察を受けるべきだ」と考え、ネットで診療所の候補を検索し、自宅からも勤務先からも、電車の乗り換えなしに30分程度で通院できそうなクリニックを受診することにした。

 実際に受診して12誘導心電図を取ってみたものの、不整脈は見当たらない。さらにホルター心電計を1日装着して波形をモニターしてみたが、この時も24時間の間に数発の期外収縮が現れただけで、明らかな異常は見つからなかった。症状がなく状態が落ち着いている時に心電図を取っても、診断に結びつく異常波形は現れないのだ。では、自分が経験したあの苦しさは何だったのか? 最も可能性が高いのは、一過性の心房細動が起きたというものだった。

 それ以来、不整脈を自覚することなく何年も経過した。――状況が変わったのは2020年頃だったように思う。朝目覚めた時に、心拍数が多いことに気づく日があった。血圧を測定してみるとやや高く、心拍数が140前後になっていた。脈はやや不規則なようだ。しかし、1~2時間休んでいると、症状が落ち着いてくる。こんな状況が2カ月に1度くらいの頻度で起こるようになった。しばらくぶりにホルター心電図も記録してみたが、たまたま測定している日には異常が起こらない。そこで主治医と相談して、市販されている携帯型心電計を購入することにした。それが新年早々に威力を発揮したことになる。

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