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 ジョンズ・ホプキンス大学が公表しているデータによれば、2021年3月上旬の時点で世界のCOVID-19感染者数は1億1800万人を超え、死者数は260万人を超えている。これほど影響の大きいパンデミックは、1918年3月頃から1920年頃まで全世界で流行したスペインインフルエンザ以来ではないかと思う。

 例えば2009年に流行したインフルエンザA/H1N1pdm09は、これらに比べればすぐにパニックが収まり、収束に向かっている。オセルタミビルなどの治療薬があり、ワクチンの生産も早期に見通しが立った。WHOは2012年にパンデミック収束後の期間に移行したと声明を出し、A/H1N1pdm09感染が確定した死者数は1万8449人と公表した。米国CDCはこの数字は過小評価だとし、アフリカや東南アジアの多くの国で、わざわざ死亡した患者のインフルエンザ検査を実施しなくなったため、確定数が増えなかったが、実際のA/H1N1pdm09による世界の死亡患者数は28万4000人だと推定している。CDCの推定が正しかったとしても、A/H1N1pdm09が季節性インフルエンザと同じ扱いになる前の死者数は、COVID-19に比べると1桁小さい。

 それらに比べると、スペインインフルエンザは猛威を振るったと言えよう。当時の世界人口は18億~20億人だったと考えられるが、世界人口の3分の1以上が感染し、数千万人が死亡し、致死率は2.5%以上と推計されている。死者数の推定幅が2000万~5000万人とかなり広いのは、1918年11月に停戦協定が結ばれるまで、第1次世界大戦が行われていたことの影響が大きい。戦争のさなかに、自国の兵士がインフルエンザで次々と寝込んでいる状況を公表するわけにはいかない。正確なデータが公表されないから、推定の幅が広くならざるを得ない。1914~18年の第1次世界大戦の戦争による犠牲者は、兵士が900万人以上、民間人が700万人以上、と推定されている。スペインインフルエンザによる死者数は、戦争の犠牲者を上回っていたというわけだ。

 ちなみにスペインインフルエンザの大流行が世界のどこから始まったのかについては確定していない。仮説として有力なのは、1918年3月にカンザス州での流行が記録に残っている米国だ。しかし、中国、欧州、アフリカが起源ではないかという仮説もある。スペインインフルエンザという名称は、第1次世界大戦に参加していない中立国だったスペインでは、報道管制が敷かれることもなく、国王や閣僚が感染したことまでニュースとして報道され有名になってしまったかららしい。

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