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 「鬼滅の刃」が「タイタニック」抜く──。

 2020年11月末、懐かしい映画の名前がメディアを賑わせた。快進撃を続ける「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の興行収入が275億円を突破し、当時、歴代2位の「タイタニック」(1997年公開)を超えたからだ。鬼滅の無限列車の勢いは止まらず、12月末には「千と千尋の神隠し」(2001年、316億円)を抜き去り、興行成績歴代トップに躍り出た。だが、これらはあくまで日本国内の話。全世界でおよそ22憶ドル(約2260億円)の興行収入をもたらしたタイタニックの背中は、はるかに遠い。

 懐かしくなったので、年末にDVDを借りてタイタニックを観た。レオナルド・ディカプリオは、あいも変わらず魅力的だった(日本中に「レオ様ブーム」が巻き起こったことをご記憶の方もいらっしゃるはず)。再観賞して強く印象に残ったのは、氷山にぶつかった後の人々の行動だった。我先にと救命ボートに乗り込もうとする乗客。死は避けられないと悟り、ベッドに横たわって最後を迎えようとする老夫婦。そして貧しい人々が入った三等客室からは、鍵をかけられて甲板にすら出られない。残酷だが、緊急時にこそ人間の本性がむき出しとなる。

 見終わって、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない現在にも通じるものがあると感じた。とんでもないトラブルが発生したとき、一番早く、最も深刻な影響を受けるのは社会的に弱い立場にある人々だ。コロナ禍で景気が落ち込むと、まず切られたのは非正規労働者の雇用だ。厚生労働省が2021年1月4日に公表したデータによると、新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めを受けた人のうち、アルバイトやパートなど非正規労働者が半分を占めていた。総務省の「労働力調査」でも、非正規労働者の数は2020年4月から減少を続けている。2020年だけで100万人以上の非正規労働者が職を失ったという報道もあるほどだ。

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