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記者の眼

最新刊『考える技術』に見るスクリーニングのエビデンス

 今年も勤務先が健康診断を実施する季節になった。例年と違うのは、新型コロナウイルス感染対策を導入したことだ。完全事前予約制にして、同じ時間帯に検査を受けられる人数を制限し、順番待ちの列ができないようになった。しかし、それ以外は労働安全衛生法が定めている定期健康診断項目に従っているだけで、特別な検査は追加されておらず、例年と同じ内容だ。こうした定期健康診断が、本当に私たち労働者の健康管理に役立つどうかについては、以前にも疑問を述べたことがある(なんでこんな検査を定期健診に入れている?)。今回は、この10月26日に発行したばかりの翻訳書籍『考える技術第4版』から、健康管理とスクリーニングに関する現在までのエビデンスの一部を紹介しよう。

 病気のスクリーニングはどんな場合に役立つかを考えると、いくつかの条件が浮かび上がる。まずその病気が、患者の死亡や重度の機能障害などをもたらす場合があることだ。放置しても自然治癒するような軽い病気は、そもそも対象にならない。次に精度が高い検査が利用できることだ。感度が低く見落としが多い検査や、特異度が低く偽陽性の山ができるようでは使い物にならない。その上、侵襲度が低くて患者に負担をかけず、費用が安いことがスクリーニング検査には望まれる。さらに有効な治療法が確立していることも必要だ。早期発見しても効果的な治療法がなく、症状が悪化してから見つかった患者と、死亡率に差がなければ、スクリーニングを行う意味がない。最後に、スクリーニングを実施することで、総死亡率や疾患特異的死亡率が減少するエビデンスがあることも重要だ。

 こうした条件を満たした上で、米国予防医療専門委員会(USPSTF)が推奨しているのは、どの疾患のスクリーニングなのか。

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