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 厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」が9月26日、公立・公的病院のうち再編統合(病床機能の変更や病床削減も含む)の再検証を要請する病院の名称や実績の分析結果を公表した(「再編統合の再検証を要請する424病院を公表」参照)。これを受け、一部の地域で住民や関係者に大きな戸惑いや不安が生じ、10月4日に国と地方による協議の場が設けられた(「地方3団体と国が地域医療に関して初会合」参照)。

 再検証を求める病院を公表するという思い切った政策の背景には、これまで地域医療構想の議論が低調で、制度の目標達成からは程遠かったという要因がある。

 地域医療構想は、団塊の世代が全て75歳以上となり高齢者医療ニーズが増大する2025年に向けて、現状の医療提供体制を需要に合わせて再構築することを目指した制度だ。二次医療圏を基本単位とする全国341構想区域で、関係者が医療提供体制や病院間の役割分担、連携などについて協議する「地域医療構想調整会議」が2017年度に始まった。必要な体制変更は、調整会議を通して個々の病院の自主性に任せる形で実施してもらう。

 これまで3年ほど、原則として年4回各構想区域で調整会議が開かれてきたわけだが、その協議が低調だった理由は幾つも挙げられる。

 まず当初、現状の医療提供体制と2025年に必要と推計される体制を比較して、どのような対応が必要かを検討するという議論の課題設定に医療関係者からの異論が相次いだ。

 というのも、現状の体制を表す「病床機能報告制度」と2025年の体制を表す「2025年の病床の必要量」では、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の定義が異なり、単純比較すると「急性期が大幅に過剰、回復期が大幅に不足」という結果になる。医療関係者からは、「回復期の病床が不足し、患者が入院困難になっている話は聞かない」といった批判が噴出し、制度の理解も浸透していなかったため、実のある議論に行きつくことが難しかった。

 その後、厚労省は議論の活性化のため、公立・公的病院等に現状や将来の体制、運営方針などを記載する「新公立病院改革プラン」や「公的医療機関等2025プラン」の提出を要請。それを基に、公立・公的病院でなければ担えない分野に重点化しているかを調整会議で検証してもらうという課題を設けた。

 結果として、この課題設定でも全体的に議論は低調だった。得てして公立・公的病院は比較的大きな病院で、地域の基幹病院であることが少なくない。周囲の民間病院はそうした病院から急性期後患者を受け入れるといった連携関係を構築しており、「公立・公的病院の体制に物申すことはなかなかできない」といった関係者の声が多く聞かれた。

 さらに公的医療機関等2025プランの対象病院には特定機能病院、すなわち大学病院も含まれており、周囲の病院にとっては若手医師の“供給源”でもある。大学病院の若手医師を非常勤で雇用し、夜間や日中の業務を担ってもらっている病院は多い。そのような周辺病院にとって、大学病院との良好な関係づくりは経営上欠かせない。こうしたある種の権力勾配がある中、フラットな意見交換はしにくい。

 そもそも病床機能や病床数という病院経営の根幹に関わる重要な内容を決めること自体、非常に困難なことだ。病床数削減、再編統合ともなれば、職員の雇用や住民の受診行動にも影響を及ぼす、大きな痛みを伴う改革である。

 すんなり解決するわけがない課題であり、活発な議論が行われにくいのは致し方ない面がある。それでも国が次の調整会議の活性化策として再検証を求める病院を公表したのは、人口動態の変化が苛烈で、地域によっては将来に向けた体制構築の議論が待ったなしの状況であることが大きな要因だろう。

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