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 アレグラやクラリチンといった花粉症の薬を、医療保険の適用から外して全額自己負担にすべきだとの提言を、健康保険組合連合会(健保連)が8月に発表したことが話題になっています。OTC類似薬の保険外しの議論は今に始まったことではありません。ただ、その保険外しの効果については疑問符が付きます。逆に医療費が増えてしまうことにならないでしょうか。

 健保連が主張する保険外しの対象は、「OTC薬で代替可能な処方薬」です。主に念頭に置かれているのはOTC薬が存在するアレグラ、クラリチン、アレジオン、ジルテックなど8種類の第二世代抗ヒスタミン薬で、一部点鼻薬や点眼薬も含まれます。これらを保険から外すことで最大600億円の薬剤費が削減できると健保連は試算しています。

 ですが、知り合いの薬剤師に話を聞くと、「そんなことやったって、先生が保険の利く薬に処方を変えてしまうから意味ないよ」と笑っていました。

 第二世代抗ヒスタミン薬は種類が多数あり、ザイザル、タリオンなどの人気ブランドはもちろん、最近出たビラノア、ルパフィン、デザレックス、アレサガテープなど合計で17種類の成分があります。OTC薬が出ている8種類を使わなくても他に9種類の選択肢があるわけで、処方内容がそれらに変われば保険外しをしても意味がありません。

 ドクターにとっても、患者さんに「ごめんなさいね、この薬は保険が利かなくなったから薬局でOTC薬買ってください」なんて言いにくく、「保険が利くこの薬にしましょうね」と言って処方を変更するのでは。それに多くの場合、患者の方から「じゃあ保険が利く薬にしてください」と相談されると思います。

 そして処方を変更するならいっそ、最近出た新薬に変更するというドクターも一定数いそうです。新薬を試してみたい気持ちはあるでしょうし、指導や監査の際に「どうして保険が使える薬に変更したのか」と詰め寄られたら「より強い効果を期待した」と説明できるかもしれません。そうすると1錠32.70円のクラリチン後発薬だったのが、1錠75.60円のビラノアになったりして、結果的に薬剤費が増えてしまわないでしょうか。

 また健保連は、全てのOTC類似薬ではなく、「OTC薬がある薬剤を1分類だけ処方する場合」に限定して、薬剤費を保険から外した場合も計算しています。その場合およそ36億円の薬剤費削減効果があるそうです。健保連としてはかなり譲歩して、このくらいの範囲なら保険外しをしても理解を得られるのではないか、という気持ちがうかがえます。

 しかし知り合いの薬剤師は「先生が『薬をもう1種類出しておきますね』で処方薬を増やして保険外しを回避するでしょ」と言います。そうなると薬剤費が増えそうです。健保連が提案している方法ではどちらにしても、薬剤費は減るどころか増えるのではと心配してしまいます。

 ところで、保険外しで医療費は本当に減るのでしょうか。まず思い出すのはビタミン剤です。厚生労働省は2012年度の診療報酬改定で、ビタミンD製剤を含む全てのビタミン剤について単なる栄養補給目的での投与を医療保険の対象外としました。この時、財務省は164億円の医療費削減効果があると試算していました。蓋を開けてみたら、ビタミン剤の薬剤料は2012年度以降も増えています。

中医協2017年12月11日資料より

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