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記者の眼

緩和ケアが心不全の標準治療となる日を目指して
「心不全パンデミック」の到来に備えよ

 この8月、日経メディカルはご好評をいただいた連載を一冊に集約し、「実践・心不全緩和ケア」を上梓しました。「緩和ケア心不全の標準治療となる日」を実現するために、医療現場の先駆的な取り組みを解説したものです。

 心不全の治療において、「積極的治療はどこまで続けるべきなのか」「いつになったらQOLを重視した緩和ケアに転換できるのか」といった問いに対する明確な答えは出たのでしょうか。5年ほど前になりますが、北里大学北里研究所病院の猪又孝元氏は「心不全の出口の議論はまだ深まっていない」と指摘されていました。

 今後、心不全患者が急増する「心不全パンデミック」がやってきます。現在、100万人規模とされる我が国の慢性心不全患者は、団塊の世代が75歳以上に達する2025年には125万人を超えると予測されています。これに、急性増悪による再入院を繰り返すという心不全の宿命が重なるため、医療体制への負荷が一気に増大することが懸念されています。出口の議論が定まらないままに患者が急増すれば、医療現場は大混乱に陥るのは必至です。

 こうした事態を見越して、解決策を探るための行動を起こした医療者たちがいました。2016年に誕生した「九州心不全緩和ケア深論プロジェクト」(共同代表:久留米大学医学部心臓・血管内科部門の柴田龍宏氏、飯塚病院緩和ケア科の柏木秀行氏)のメンバーらも、真っ向から「出口の議論」に挑み、心不全の緩和ケアの実践に取り組んできました。その深論メンバーに、個別事例に基づいた「心不全緩和ケア」という新しいムーブメントを語り尽くしていただいたのが「実践・心不全緩和ケア」です。

 表1に示した主な目次が語るように、心不全緩和ケアには、主治医である循環器内科医はもとより、緩和ケア医、在宅医療に携わる医師、看護師、薬剤師など、多くの医療者が関わっています。心不全緩和ケアに取り組む全ての医療者に、参考にしていただければ幸いです。

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