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 急増する外国人患者に対応するため、国立国際医療研究センター国際診療部は2016年から、医療従事者や栄養士、ソーシャルワーカーなどを対象に外国人医療実践講座を実施している。その第8回目となる「緊急帰国支援 国際医療搬送に備えよう」が今年2月に開催された。

 今回取り上げたテーマは「国際医療搬送」。海外渡航中の日本人が外傷や感染症、心血管イベントといった重篤な疾患を発症し、日本での治療を希望している場合や、医療機関に救急搬送されてきた重症の訪日外国人患者が帰国を希望した場合の対応法が紹介された。

 専用機を用いた医療搬送には多くの費用がかかる。そのため国際搬送をする場合は、症状が落ち着いた段階で民間旅客機を使って搬送するのが一般的だ。重篤な疾患を抱える患者が民間旅客機で移動するには、原則として幾つかの要件を満たす必要がある。主なものは以下の通りだ。(1)離着陸時(最低でも30~40分)に自身で着座して座位を保ち、両足を床につけること、(2)自分自身のこと(歩行や食事、トイレなど)が本人自身または介助者のサポートによりできる、(3)感染症に罹患していない、(3)酸素吸入や医療機器によるサポートが必要ない、(4)搭乗中に疾病の増悪リスクが低い――といった要件だ。

 これらの要件を満たしていたとしても、患者が民間旅客機に搭乗する時に車椅子や人的補助が必要な場合などには、搭乗の3日~1週間前までに主治医が記入した意見書「MEDIF(Medical Information Form)」を航空会社に送っておく必要がある。それとは別に、航空機に搭乗しても症状に差し支えないと主治医が説明するための意見書「Fit to Fly Letter」を患者に持たせておくと、搭乗がスムーズになるという。

 つまり、民間旅客機で患者を搬送するには、移動時間や環境変化に伴う影響を考慮した診察・治療を行うだけでなく、医師が航空会社ごとの要件に合わせた書類を作成しなければならないのだ。

 ちなみに診断書が必要になるか否かの基準は航空会社により異なる。例えば日本航空(JAL)では、以下の場合は搭乗に際して診断書がいると示されている。

(1)ストレッチャー(簡易ベッド)を使用する
(2)酸素ボトルを使用する
(3)医療機器を使用する
(4)怪我や疾病の治療、最近受けた手術が航空旅行により体に影響をおよぼすと思われる場合
(5)出産予定日から28日以内の妊婦
(6)そのほか病状、体調が急に変化するおそれがある、特別の手配や介助が必要な場合

 一方、全日本空輸(ANA)では、以下の症例で診断書がいると記されている。

(1)機内で酸素吸入、医療機器の使用、医療行為を行う必要がある
(2)ストレッチャー(簡易ベッド)、保育器を使用する
(3)重症傷病患者
(4)重症心疾患や重症呼吸器疾患、脳卒中急性期、重症貧血、吐血や下血、腸閉塞など、ANAが指定する疾患に該当する患者
(5)上記(1)~(4)の他に怪我、治療中の疾病や最近受けた手術が航空旅行により体に影響を及ぼすと思われる場合

 上記の要件や各航空会社独自の判断基準を満たせなければ、医師や看護師が同乗しての搬送になったり、医師が医療処置を行いながら移動できる「医療搬送機」を使用しての移動になる。

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