薬剤耐性(AMR)の取材をしていると、「医療だけでなく、畜水産分野での抗菌薬の適正使用が求められる」との声をよく聞く。ワンヘルス(One Health)といわれるもので、人の健康を守るためには医学・獣医学の横断的な連携が必須との考えだ。
個人的にも、家畜の成長促進剤として抗菌薬が使用されていると聞くと、それだけで驚きで、気持ちの悪さを感じなくはない。実際、そのような市民の感情を反映してか、今年11月にWHOは、家畜の成長促進目的での抗菌薬の使用を制限するとのガイドラインを公表している。
AMR対策で世界的なリーダーシップを発揮している英国主席医務官のサリー・デイビス氏に、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター長の大曲貴夫氏と対談してもらったが(「『かぜ診療の見直し』は日英共通の課題」)、デイビス氏は、日本における畜水産分野でのAMR対策への不満を何度も口にしていた。
畜産分野での抗菌薬の適正使用が日本で本当に遅れているのか、正直なところ半信半疑。ちゃんと確かめたくなり、このほど農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課に取材したので、その内容を紹介したい。
飼料添加物としての抗菌薬の2割強がコリスチン
畜水産分野での抗菌薬の使用用途は動物用医薬品と飼料添加物(成長促進剤)の2つに大きく分かれる。特に、世界的に問題とされるのは、成長促進剤としての抗菌薬使用だ。日本では、成長促進剤として用いられる抗菌薬(抗菌性物質製剤)は特定添加物と呼ばれ、農林水産消費安全技術センター(FAMIC)による検定に合格した製剤のみが使用できる。2016年度に特定添加物として検定に合格した製剤の種類と実量力価換算量を見ると、確かにコリスチンが実量力価換算量で全体の22.8%を占めていた(表1)。
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