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 「高齢者の難治性褥瘡を、メルスモンという胎盤抽出液の注射で治せないかと考えているんだが、大滝さんどう思う?」。1年前、宮城県気仙沼市の三陸海岸に浮かぶ離島、大島で診療所を開業している山本馨先生(現・豊頃医院[北海道中川郡豊頃町]院長)から、こんな電話がかかってきた。

 山本先生は、7年前の第188回日本消化器病学会東北支部例会で「アニサキス症に対する新しい治療」と題する演題を発表。筆者がこの演題に興味を抱き、仙台市内の学会場で話を伺って記事にしたことをきっかけに、先生とは現在も親交が続いている。

 アニサキス幼虫が寄生する生魚を摂食することで発症するアニサキス症の治療は、粘膜に穿入している虫体を内視鏡下で除去するのが一般的。だが、山本先生は臨床経験から「アニサキス症での激烈な腹痛は虫体の分泌物が原因のアレルギー症状」と考え、数百人のアニサキス症患者に対し、複数の抗炎症薬を併用する治療を行い効果を確認してきた(関連記事:アニサキス症はアレルギー)。地域柄アニサキス症が多く、内視鏡専門医へのアクセスが良くない沿岸地域を中心に、この即時療法が徐々に広がっている(関連記事:ステロイドがアニサキス症の激痛を速やかに軽減)。

 僻地での長年の臨床経験と病態、治療薬への深い洞察から生まれたアイデアは他にもある。例えば、専門医でも手こずる大腸内視鏡検査の際、漢方薬の麻子仁丸と造影剤のガストログラフィンを併用すると大腸のぬめりが増し、ファイバースコープをスムーズにかつ患者に苦痛を与えることなく挿入できるというもの。ぬめりを有するガストログラフィンに加え、麻子仁や杏仁といった油性成分があり潤腸通便の効能を有する麻子仁丸を飲ませたら、もっとぬめりが増すのではと思い試したところ、以前にも増してぬめりが良くなった。2013年に連続50例の大腸検査をこの方法で行った結果、そのうちポリープ4例と憩室5例、潰瘍性大腸炎1例を見つけることができたという(関連記事:漢方薬で大腸内視鏡の挿入が容易に)。

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