日経メディカルのロゴ画像

記者の眼

麻央さん訃報に思う、広がれ!若年性乳癌対策

 6月末に亡くなられた、フリーアナウンサーの小林麻央さんに関連して、日経メディカル Onlineにも、幾つか記事が掲載されました(関連記事:小林麻央さん訃報で感じた医師の言葉のズレ具合麻央さんだから自宅で最期を迎えられたのか)。ご冥福をお祈りしつつ、若年性乳癌への対策が一刻も早く国内に普及してほしいと切に願っています。

 というのも、若年で発症しやすい乳癌や卵巣癌の一部は、その原因遺伝子が明らかになっており、遺伝子変異を有する場合に積極的な対策を立てることで、発症そのものを予防したり、非常に早い段階で発見し、癌による死を回避できるようになってきているからです。

 実際、米国ではそのような対策は一般的です。2013年5月、米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが乳癌予防のために乳房を切除したというニュースが世界を駆け巡りました(関連記事:アンジェリーナ・ジョリーと遺伝性乳癌卵巣癌症候群)。

 彼女は、BRCA1という遺伝子に変異を有するとのこと。この遺伝子やBRCA2は最も研究の進んだ遺伝子で、変異を有すると、生涯どれほどの確率で癌を発症するかが分かっており、その対策もガイドラインで明示されています。アンジェリーナさんは、実母が乳癌で苦しんだ姿を間近で見ていたこともあり、予防的な切除を決心したようです。

 日本人にとってもこれら遺伝子変異が原因となる癌は身近なものです。年間9万人の新規乳癌患者のうち5~10%が遺伝性と考えられており、若年で発症する例ほど遺伝性の可能性が高いといわれています。つまり、これらの遺伝子変異の有無を前もって知っていれば、アンジェリーナさんのような積極的な予防介入や、より精度の高い検診を20歳代から受けるなどの対策を取ることが可能になるのです。

 ちなみに、これら遺伝性の乳癌・卵巣癌の発症リスクが高い人は、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)症候群と呼ばれます。残念なことに、いまだ国内でその認知度は低く、積極的な予防や早期発見のための介入は広く行われていないのが現状です。

 HBOC症候群の場合、乳癌や卵巣癌だけでなく、膵癌や前立腺癌のリスクもあります。また、それ以外の人と比べ癌の発症年齢が若いため、通常よりも早期から、通常の検診とは異なる方法(マンモグラフィーとMRIなど)による検診が海外では推奨されています。

この記事を読んでいる人におすすめ