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記者の眼

癌になった医師は化学療法を受けるのか

 日経メディカル2017年3月号で、特集「医師が癌になったとき」を担当した。医療を提供する側だった医師が、と診断された時点を境に医療を受ける側である患者になるという経験に焦点を当てた記事だが、取材した医師には共通して「癌をむやみに恐れていない」「診断後すぐに治療法を考え始めるなど、気持ちの切り替えが早い」という印象を受けた。

 その特集では、治療法の選択についてまでページを割くことはできなかったが、どの医師も「エビデンスに基づいて選んだ」と話してくれた。医師は治療の有効性や副作用などの情報にアクセスしやすく、検査値の意味も理解しているため、治療法を選択する際の迷いは一般の人よりも少ないのだろう。

 実際に、「癌治療に携わっている医師や薬剤師が癌になったときに、化学療法を受けるか」について調査を行った医師がいる。大森赤十字病院(東京都大田区)第一外科部長の佐々木愼氏は、2016年5~6月に5つの医療機関で胃癌の化学療法に関わっている医師と薬剤師を合わせて83人(医師54人、薬剤師29人)を対象にアンケートを行った(回答者の癌経験は不明)。化学療法を受けるに当たり、消化管症状や脱毛といった副作用のほか、高額な治療費、治療に費やす時間など、決断の障壁になる要素も多い。「医療者が実際に患者になったときに化学療法をどの程度受け入れるのか、医療者・患者という立場の違いで考え方を変えていないかを知りたかった」と佐々木氏は調査の背景を話す。

 胃癌の術後補助化学療法(TS-1[テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤]単独療法、CapeOX[カペシタビン、オキサリプラチン併用療法])と進行・再発胃癌への化学療法について、「現在は患者に化学療法を勧めているが、患者になった場合、選択に消極的になるかどうか」を尋ねた。

 その結果、補助化学療法について「医療提供者と患者の立場では考え方が変わる(消極的になる)」と答えたのは、医師では6人(11.3%)、薬剤師では3人(10.3%)だった。一方、進行・再発胃癌への化学療法では、医師の13人(24.5%)、薬剤師の8人(27.6%)が「変わる」と答えた。

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