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記者の眼

厚労相が学会で明かした抗菌薬削減の奥の手

 2020年までの3年間で、国内の抗菌薬の使用量が大きく減少しそうだ。保険者のレセプト審査を強化することで、不適切な抗菌薬処方を削減する案が浮上しているからだ。「現在、多くの保険者は被保険者がどのような抗菌薬の処方を受けているかあまり関心がない。保険者の意識を変えることで、明らかに不適切な抗菌薬処方をはじく仕組みを整える必要があるのではないか」。厚生労働相の塩崎恭久氏は、4月8日に行われた日本感染症学会と日本化学療法学会の合同学会で、こう話した(関連記事)。

 「不適切な処方の線引きは医師の先生方が決めるべき」としつつも、塩崎氏がレセプト審査に言及してまで抗菌薬の使用量を減らそうとする背景には、薬剤耐性(AMR)に対する国際的な危機感の高まりがある。2014年12月に報告されたイギリスのJim O'Neillレポートは、このまま何も対策を取らなかった場合、2050年にはAMRを獲得した病原体によって世界中で1000万人が死亡し、100兆ドルの経済的損失が発生すると試算している(関連記事)。

 このレポートをきっかけに、2015年5月に開かれたWHO総会では、国際的に初めてAMR対策の議論が交わされた。総会では、全ての参加国が2年以内に国家行動計画(アクションプラン)を定め、実行に移すことになった。ところが2年以内とされてはいたものの、5カ月後の10月にG7ベルリン保健大臣会合が行われたとき、「G7の中でアクションプランを作っていなかったのは日本だけだった」と塩崎氏は振り返る。「伊勢志摩サミットで安倍総理に恥をかかせるわけにはいかないと、大車輪で作ることになった」と同氏は当時の日本の後れを取っていた状況を説明した。

 欧米諸国に追い付く形で、日本政府は2016年4月にAMR対策アクションプランを決定(関連記事)。翌5月に三重県で行われた伊勢志摩サミットでも、世界経済、移民問題、テロ対策などと並ぶ形でAMR対策が取り上げられた(関連記事)。

日常診療に直結する取り組みも
 AMR対策は着々と進められているが、話のスケールが世界規模ということもあり、どこか縁遠い話に感じてしまう読者の方も多いのではないだろうか。しかし、日本が進めるアクションプランには、現場の臨床医にも影響のある取り組みが存在する。「抗微生物薬適正使用の推進」だ。

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