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 訪日外国人に我が国の質の高い医療を提供し、外貨を獲得する目的で政府は医療ツーリズム体制の整備を急速に進めている。広報の成果か、日本の医療を受けようと様々な国から多くの外国人が日本の医療機関を訪れるようになっているが、その一方で、外国人診療に携わる医療者からは日本の公的医療保険制度への影響を懸念する声が挙がっている。「一部の訪日外国人が日本の保険医療制度の隙をつき、公的医療保険を利用して高額な医療を受けている。国内の医療費が膨らみ続ける中、こうした事態を見過ごしてしまってよいのか」という指摘だ。

 外国人診療の実態を取り上げた記事の執筆のため、医療機関へ取材をしていたところ、興味深い話を聞いた(関連記事:「日本の常識は通用しないと肝に銘じよ」「検査の後に『支払えない』と言われないためには」)。

 外国人患者の中には短期留学中に高額な治療・高度な手術を受ける患者、滞在期間の期限直前に高度な手術を受けて滞在期間を延長する書類の作成を医師に求める患者などが一定数いるのだという。

 その他にも、患者に付き添っていた「通訳」と称する人物が数十枚もの健康保険証を持ち、待合室で患者の氏名を確認して手渡していたというエピソードも聞いた。

 こうした患者の多くは、薬剤費が高額なC型肝炎や癌の治療、高度な手術などを受けるために来日していたという。医療ツーリズムのために政府が創設した「医療滞在ビザ」の仕組みでは高額な医療費や滞在費がかかることから、「目的外入国をするなどして、日本の医療保険制度を都合よく利用している訪日外国人が急増している」(看護師A氏)というのだ。

 訪日外国人による医療保険制度の利用法には幾つかのパターンがある。1つは国民健康保険の被保険者資格を取得し、最低レベルの保険料を支払い高額療養費制度を使うケースだ。

 日本では在留期間が3カ月を超えれば、外国人も国民健康保険の加入対象となる。保険料は前年度の所得により決まるため、前年度に国内での収入がなければ年間数千円で済む自治体もある。「留学」に加え、外国人起業家向けの「経営管理」といった在留資格を取得した外国人は、国保に加入すれば、本人はもちろん扶養家族も保険診療が受けられる。

 国保に加入した外国人に緊急の医療が必要になれば、日本の医療保険を利用することは当然の権利といえる。だが、手術や慢性疾患の治療を受けることを目的に短期留学をしたり、起業予定の有無にかかわらず在留資格を取得して治療のために家族を呼び寄せる例もあると聞く。

 中小企業のサラリーマンやその家族が対象の「協会けんぽ」で、加入資格のない人を扶養家族として申請している企業があるという事例もあった。上記で示した何枚もの健康保険証を配布していた事例は、これに当てはまるかもしれない。

 さらにはこうした日本の医療保険制度の隙を突くような保険資格の取得を手引きするブローカーもいるという。このように日本の医療保険制度を不適切な形で利用する人々からすれば、「日本の保険証はあたかも医療の割引チケットのように捉えられている」(看護師A氏)。

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