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 免疫反応といえば、B細胞やT細胞が関わる「獲得免疫」がよく知られていますが、近年では、抗原を認識する受容体を持たない「自然免疫」の存在が明らかとなってきました。

 先日、自然免疫に関わる自然リンパ球(Innate lymphoid cells:ILC)の1つで、ヒトの体内でアレルギー性の炎症や寄生虫の感染防御に関係する2型ILCILC2)を発見し、その成果を2010年にNature誌に発表した理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター自然免疫システム研究チームのチームリーダーである茂呂和世氏を取材しました。

 茂呂氏がILC2を発見したきっかけは、マウスに免疫細胞を移植して実験しているうちに、腸間膜に細胞が集積しているのを偶然見つけたことでした。しかし茂呂氏が病理医に相談すると、「癌患者や炎症を起こしている患者ではよく起きるありふれた現象だ」と言われ、落胆したといいます。ノートに記録しておこうと考え、ふと、観察される細胞の名前を聞いてみると、「ない」と言われました。

 「それなら、自分で名前を付けて研究してみよう」と茂呂氏は奮起。腸間膜に存在する細胞塊をFat-associated lymphoid clusters(FALC)と名付け、細胞の塊の正体を突き止めようと研究を始めました。当初は、T細胞の前駆細胞だと考えていましたが、実は今まで報告されていなかった新しいリンパ球だった、というわけです。

 新しいものは見つけようと思って見つかるものではなく、興味に導かれて偶然見つかるという好例といえそうです。臨床の現場では、炎症が起きていることを示す当たり前の現象でも、「なんでだろう」「どうなっているのだろう」と興味を持って調べてみると、新しい発見につながる可能性があると実感しました。

 臨床の先生方にとってありふれた現象が、実は何かの発見につながるかもしれません。「いつも起こるこの現象は何か」と、バイオの研究者と気軽に意見交換できるような場があれば、例えば、今話題の癌免疫チェックポイント阻害薬の予後マーカーが見つかるきっかけになったりして、と安易に想像してしまった次第です。
 

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