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 目まぐるしく変化し、複雑化する医療介護制度。全国の医療機関の経営者は今、地域医療構想地域包括ケアシステムへの対応に頭を悩ませていることだろう。しかし、制度よりももっと深刻な現実が、既に各地を襲い始めている。人口減少だ。人口減少はそのまま、医療マーケットの縮小(患者減少)を意味する。地方では、「患者減少→収益減→医師・看護師確保難」という負のスパイラルに陥り、病院が病院として成立し得ない状況も生じ始めている。

 地域医療構想は、まさにそうした状況に備えるための制度と言うことができる。策定に向けては、構想区域内において、個々の病院の病床の医療機能の分担をしなければならないが、その調整はどこも難航しているようだ。構想区域ごとに設けられる、いわゆる協議の場(地域医療構想調整会議)で話し合いによって行うのが基本だ。しかし、実際問題として、話し合いで決めるのはなかなか難しい。1つには急性期機能を手放したくないと考える病院がまだまだ多いことが挙げられる。一方、その在り方が根本的に見直される予定の療養病床は、見直し次第では「病院でなくなる」可能性があることも経営者たちの決断を迷わせる。

共倒れしないで生き残るためには
 そんな中、「地域医療構想を達成するための1つの選択肢」という触れ込みで、新しい制度が来年4月にスタートする。「地域医療連携推進法人」だ。聞き慣れない制度だが、「人口減や患者減にあえぐ地方で、医療機関が共倒れせず生き残るための最終手段」と語る病院経営者もいる。
 
 地域医療連携推進法人は、経営母体が違う医療機関や介護施設が、機能分化や連携を一体的に推進するための新しい仕組みだ。参加法人の間で診療科・病床の再編、医師の配置換え、医療機器共同利用、医薬品等共同購入などを一体的に進めると同時に、病床の融通もできるようにする。

 当初、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」として検討が始まったが、医療法の中に落とし込む段階で、「地域医療構想を達成するための1つの選択肢」として、自発的に連携を推し進める制度に最終的に落ち着いた。昨年9月の医療法改正によって創設が決まり、正式スタートは2017年4月となっている。

 既に、準備を進める医療法人や地方独立行政法人などが各地で出てきている。いち早く検討を開始した医療機関に共通するのは、将来への危機感だ。日本海総合病院(山形県酒田市)、カレスサッポロ(札幌市)、相良病院(鹿児島市)、河北総合病院(東京都杉並区)など、地域でリーダーシップを取る医療機関が検討を始めている点も注目される。

 日本海総合病院を経営する山形県・酒田市病院機構理事長の栗谷義樹氏は「人口減、患者減が止まらないこの地域で、今までのような形だけの“連携”を続けていても個々の医療機関はもう持たない」と話す。酒田市では、同機構が運営する日本海総合病院、民間病院、社会福祉法人等によって、地域医療連携推進法人の設立に向けて準備が進められている。

 また、岡山県真庭市で金田病院を運営する社会医療法人緑壮会理事長の金田道弘氏も、「真庭市で最も大きい2病院が協力していくことが、地域医療を守る意味でも、職員を守る意味でも絶対に必要だという信念で検討に入った」と語る。真庭市では金田病院、医療法人井口会・落合病院の2病院が、地域医療連携推進法人設立の検討に入っている。
 

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