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記者の眼

巨額再算定を憂う前に無駄削減に寄与する製品を

 2016年度の診療報酬調剤報酬改定、薬価制度改革などの全体像がほぼ固まりつつあるが、今回の改定で恐らく一番経営に影響を受けるのは製薬企業だろう。薬価の引き下げ率は1.22%(国費ベースで1200億円の削減)で、それ以外に「外枠」として市場拡大再算定などで約500億円を削り込まれる。

 もちろん個別の事業の中身を見てみると、免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(一般名ニボルマブ)の売り上げ拡大で今後しばらく順調に業績を伸ばすとみられる小野薬品工業のような企業もあるものの、後発医薬品の使用促進に伴う長期収載医薬品の売り上げ減少は、大半の製薬企業の業績に重荷となってのしかかる。

 中堅製薬企業などは後発医薬品事業に活路を求めてきたが、既に過当競争気味で決して安易な事業ではない。かといって新薬の創出に夢を託そうにも、年間売上高が1000億円から1500億円を超えた医薬品の薬価を大幅に引き下げる特例拡大再算定(巨額再算定)などという仕組みが登場する始末。今改定を乗り切れば何とかなるというものではないだけに、八方塞がりの感を強めている業界関係者は少なくあるまい。

 閉塞感の原因はもちろん政府による医療費抑制の圧力強化にあるわけだが、2025年の超高齢社会到来に備え、医療や社会保障の仕組みをより効率的にしておかなければならないことは分かっているだけに、異論も唱えにくい。日本製薬工業協会が年初の記者会見で示した、特例拡大再算定に対する「容認できない」とするコメントに、前振りとして「国民皆保険制度維持といった視点の重要性は十分認識しているものの、」という文言が付いていた辺りにも、業界の苦しい胸の内が表れる。

製薬企業は現場ニーズに即した製品を作っているか
 ただ、医療費の抑制、効率化という観点で、現在の製薬企業が十分な取り組みを行っているかというと、大いに疑問を感じるところだ。製薬企業は基本的に薬を作って売るだけで、その薬が現場でどのように使われているかについてはあまり気にしてこなかったのではないか。

 昨今、市販後調査などを通して安全性や有効性に関する情報を現場から多少は集めるようになったかもしれないが、売った薬が実際にどのぐらい患者に服用され、どのぐらいが無駄になっているか、その理由は何かということまでは把握していないのが実情だろう。例えば昨年、医療費の無駄の一因として残薬の問題が様々なところで取り上げられていたが、自分たちが積極的に関わるべき問題と考えていた製薬企業の関係者はどれほどいただろうか。なお、医薬品と医療費の関係でいうと、4月から医療技術評価(HTA)の試行が始まることが話題になっているが、ここで議論したいのはHTAのことではなく、医薬品が臨床現場で使われる際に生じる“無駄”を何とかしませんか、ということだ。

 製薬企業への取材を長年経験した後に、薬局へ取材に行って驚いたのは、厳格なGMP管理下で製造された医薬品が薬局の調剤室でPTPシートから取り出され(しかも場合によっては粉砕され)、一包化するという作業がごく日常的に行われていたことだ。GMP製造との品質管理体制の違いを感じると同時に、薬剤師がこの作業にずいぶん時間を掛けており、しかもその作業量が多いために特殊な器具を自製しているといった話を聞いて、「メーカーが現場ニーズに即した製品を作っていないからではないか」と率直に思った。

 もちろん、規制や流通など様々な要因が絡むのでそんなに簡単な話ではないかもしれないが、例えばありがちな処方薬の組み合わせを1シートにまとめた製品をメーカーが製造、供給するようになれば、多少は薬剤師の人手不足の緩和につながるだろうし、一包化加算が不要になる分、医療費削減に寄与できるかもしれない。
 

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