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記者の眼

再生医療新法で再生医療の自由診療はどうなる?

 再生医療臨床研究自由診療のルールについて定めた再生医療等安全性確保法再生医療新法)。昨年11月24日に施行後1年の猶予期間が終了し、今後、再生医療等提供計画の提出など基準を満たした医療機関以外では再生医療の提供ができなくなる。

 再生医療と聞くと、iPS細胞などを利用した最先端の医療を思い浮かべがちだが、それだけが再生医療新法の対象となっているわけではない。

 再生医療新法の対象には、患者由来の体細胞を利用し、その細胞に対して蛋白質や遺伝子の挿入を行わない治療法も含まれる。例えば現在、民間のクリニックなどで自由診療として行われている多血小板血漿(Platelet Rich Plasma:PRP)療法や癌免疫療法などだ。

 PRP療法は、大学病院で難治性皮膚潰瘍のための先進医療として認められているものもあるが、民間のクリニックなどで手掛けられているものの多くは、しわ取りなどの美容目的だ。患者の血液を採取し、血小板を分離して、高密度に濃縮したPRPを、患部に注入する。癌免疫療法は、患者の血中に含まれるT細胞などを何らかの方法で活性化させたり、増殖させてから患者に投与する方法だ。これらの治療法は、再生医療新法では再生医療の中でも最もリスクの低い「第3種」の再生医療として定義される。

 再生医療新法により、従来は規制がない状態で再生医療の臨床研究や自由診療行われてきたこのような自由診療に、安全性を重視したルールが課されることとなった。

 まず、治療で利用する細胞などを調整する医療機関の細胞培養加工施設は、国が定めた基準を満たさなければならなくなった。加えて、治療を開始するには、治療を実施する医療機関が、治療の内容などを明記した再生医療等提供計画を地方厚生局(厚生労働省の地方支分部局)に提出することが定められた。
 
 提供計画書を提出するためには、再生医療等委員会で提供計画の内容について審議してもらい、意見書を発行してもらう必要がある。医療機関に対して膨大な書類を用意させ、委員会で治療の内容をチェックする過程を入れた手続きを課すことで、国が自由診療の実態を把握できる仕組みとした。ちなみに、再生医療等委員会とは、再生医療の専門家などから構成されているもので、医療機関などが設置できる。再生医療等委員会の設置についても、厚労省の認定が必要だ。

 大学病院でPRP療法の研究開発を手掛けるある医師は、「PRPは患者由来の血液を利用する治療法で実績も多く、安全性が高いといえる。逆にそのことが、ずさんな管理下での治療を可能にさせてしまう現状がある。施設や治療計画の届け出などは、非常に手間が掛かり、正直言って面倒くさい。しかし、基準に届かないような医療機関を排除できることは賛成だ。それくらい、世間には根拠のない宣伝で患者を集め、適切とはいえない環境で実施されている治療が存在するということだ」と話していた。

 基準を満たした細胞培養加工施設の維持管理費には、かなりのコストが掛かるため、小さなクリニックなどは施設の維持が難しい。そのような状況で、治療を続けたい場合はどうしたらよいのか。

 今回の再生医療新法では、基準を満たし、地方厚生局から許可を得た細胞培養加工施設を持つ企業などに対して、細胞の培養を委託することが可能となった。提供計画を提出するなど再生医療を実施する医療機関の手続きは変わらないが、委託をすることで、細胞培養加工施設の維持管理を行わなくて済む。今後、このような細胞培養の委託により小さな民間クリニックなどでの再生医療の安全性は担保されることになるだろう。
 

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