日々、インターネット上で溢れるほどの医療情報が発信されている今、厚生労働省などからの通達や医学論文を読む機会が多い医療従事者はともかく、患者やその家族といった一般の受療者からすれば、どの情報を信じればよいのかの判断は難しい。加えて、適切な知識を持っているかどうかにより、様々なウェブサイトに記載されている説明や評価の文言の受け取り方や印象は変わる。
ここで読者の皆さんに、りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)周産期センター産科医療センター長の荻田和秀氏が昨年末に行った講演内容をお示ししたい。荻田氏はその講演で身近にある物質を「DHMO」と呼び、その特性を説明していた。どのような印象を抱くかを考えてみてほしい。
DHMOの特性は以下の通り。
・染料の主成分に用いられ、洗浄剤や溶剤に使われている。
・常温では液体。無色透明無臭。
・加温すると爆発的に気化することがある。
・液体のDHMOを呼吸器に吸引すると死亡する。
・純度の高いDHMOは溶血作用があり、赤血球を破壊する。
・人体に蓄積される(特に妊娠後期の女性の皮下に蓄積)。
・マウスの妊娠初期にDHMOを大量に皮下注射すると胎仔の奇形の発症率・流産率が有意に高まることが示されている。
・危険性が高い物質にもかかわらず、厚労省もいまだに規制していない。
筆者は、「この物質は何だろう。危険かも……」と考えつつ講演を聞いていたが、読者の皆さんはどのような印象を受けるだろうか。
種明かしをすると、「DHMO」は化学式di-hydrogen monoxideの略。一酸化二水素、つまり「水」をあえて分かりにくくした呼び方だ。「なんだ、水か」と思った方は案外多いのではなかろうか。
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