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記者の眼

診療所院長が実践、“身の丈”人事考課の成果

 診療所院長にとって、日々の運営で悩みの種になりやすいのが人事労務管理だ。増患にはそれほど苦労していないし、財務面は会計士や税理士にお願いしておけば何とかなる。でも職員の問題だけは対処が難しくて……。そんな院長の本音を、これまで何度も聞いてきた。

 労働法や年金、社会保険の実務なら専門家に依頼することもできるが、院内の人間関係などを巡るトラブルは外部にはなかなか相談しにくいし、そもそも相談できる相手も少ない。日経メディカル Onlineに昨年オープンしたテーマサイト「Clinic Management」に、「職員トラブル大研究」「クリニック覆面調査」といったコラムを設けたのも、そうした現場の悩みにお応えしたいという思いがあったからだ。実際に発生したトラブル事例を基に、効果的な予防策や対処策を提示することができればと考えた。

一人ひとりの働きぶりをチェックできず…
 これらのコラムで様々なパターンのトラブル事例を取り上げてきたが、まだ紹介できていないのが人事考課関連のケースだ。「職員の働きに見合う賃金を支給したい」などの理由から、小規模な診療所でも人事考課を導入し、給与に反映させるケースが目立つようになったが、運用がうまくいかず行き詰まる例も少なくないようだ。

 診療所運営に詳しい社会保険労務士などの専門家に話を聞くと、失敗の理由としては、(1)多忙な院長が職員一人ひとりの働きぶりをよく見ることができず正当な評価ができない、(2)人事考課の項目が抽象的で分かりにくかったり運営実態に見合っていない――といった点が挙げられるという。

 そんな状況の中、人事考課をうまく使い、組織の活性化に努めている耳鼻咽喉科の診療所院長にお話を伺ったことがある。ユニークなのが、評価項目の設定。「言い訳が目立つようなことがなかった」「『~してもらっていいですか』という言葉遣いをしていない」「朝礼、会議、カンファレンスなどで積極的に発言をした」「清掃などスタッフ全員の共同作業を率先して行うことができている」などかなり具体的で、業務マニュアルをそのまま評価項目にしたような内容だ。

 これらは、「改善を望んでいるものの、その都度注意するのが難しい」事柄を抽出したもの。スタッフが人事考課を意識して取り組むようになることで、院長がいちいち注意しなくても、おのずと業務改善が進むという“仕掛け”を取り入れた形だ。

 また、「積極性」や「協調性」といった抽象的な指標と比べ、客観的に評価しやすいため、評価を受ける側の職員の納得を得やすいというメリットもある。それでも念には念をということで、各項目につき職員に自己評価をしてもらった上で、院長との個別面談で擦り合わせを行い、最終的な評価結果を決定している。

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