日経メディカルのロゴ画像

 10月末、厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~」を発表した。薬局・薬剤師の基本理念や今後の在り方を厚労省が文書で示した初めてのものだ。厚労省は、同ビジョンの目標を患者本位の医薬分業を実現することとした上で、基本的な考え方として、(1)立地から機能へ、(2)対物業務から対人業務へ、(3)バラバラから1つへ──の3点を挙げている(関連記事:厚労省、「患者のための薬局ビジョン」を公表)。

 (2)について、思うことがある。同ビジョンの本文を少し引用したい。

 「薬剤師は、従来の対物業務から対人業務へとシフトを図ることが必要である。これまでは、調剤室での調製など、患者とは直接接しない業務が中心だった。しかしこれからは、(中略)、処方内容のチェック、多剤・重複投薬や飲み合わせの確認、医師への疑義照会、丁寧な服薬指導、在宅対応も通じた継続的な服薬状況・副作用などのモニタリング、それを踏まえた医師へのフィードバックや処方提案、残薬解消などの対人業務を増やしていく必要がある」(下線は筆者追加)

 ちなみに、シフト(shift)の意味は、名詞としては「移行、転換、移動」、動詞だったら「転じる、変わる、移る」だ。読み代えると、対物業務から対人業務に“移行”を図れと言っていることになる。では、対物業務はおろそかになってもいいということだろうか。

 薬局を利用する患者の立場から考えてみると、対物業務がおろそかになり、「調剤を間違える」「待ち時間が長くなる」のは本当に困る。調剤助手や事務員が調剤をするしないにかかわらず、患者が薬局に第一に求めることは、「対物業務をきっちりやること」ではないだろうか。どれほど服薬指導が分かりやすくても、もらった薬の種類が違う、数が合っていない薬局は全くもって信用できない。

 時代に逆行するのかもしれないが、患者目線で考えると、薬局薬剤師は、いかに速く正確にピッキングできるかを誇りにしていいと思う! 薬局薬剤師は変わらなければならないとちまたでいわれているが、今のままでいいこともあるはずだ。それは、調剤をきっちりするということ。それこそ、患者が第一に求める薬局の機能だ!と断言したい。少なくとも私はそうだ。

 「一昔前まで、薬剤師は皆、いかに速くピッキングできるかを競っていた。しかし、薬剤師に求められるべきものは薬学的評価ができるかどうか」と取材先に聞いたことがある。確かに、その通りだと思う。ビジョンが言うように、対人業務も大切だろう。特に、多剤・重複投薬や飲み合わせの確認には、今後、さらに力を入れてほしい。高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)問題を解消するには薬剤師の力が不可欠だろう。

 でも、対物業務が信用できない所は、かかりつけ薬局にはしたくない。調剤が速く正確という対物業務をこなした上で、初めて、服薬指導や副作用モニタリングという対人業務が生きてくると思う。

 そもそも、「調剤室での調製」を対物業務と称するが、少しでも速くかつ正確に調剤するため、これまで多くの薬剤師が積み上げてきた努力は、待っている患者のためを思ってのものだろう。薬という物を介したとしても、それは単なる“対物業務”ではないと思うのだが、読者の皆様はどう思われるだろうか。

この記事を読んでいる人におすすめ