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記者の眼

再生医療関連法下で2製品近く初承認も課題山積

 2015年9月2日に開催される厚生労働省の薬事・食品衛生審議会再生医療等製品部会・生物由来技術部会で、JCRファーマが承認申請中の細胞性医薬品「テムセルHS注」と、テルモが承認申請中の骨格筋芽細胞シート「ハートシート」の審議が予定されている。

 テムセルHS注は、ドナーの骨髄液から分離した間葉系幹細胞を静脈注射で投与する他家細胞医薬で、造血幹細胞移植などに伴う急性移植片対宿主病(急性GVHD)を対象に開発が進められてきた。ハートシートは、患者から採取した骨格筋芽細胞を温度応答性細胞培養皿で培養して心筋細胞を含む細胞シートを作製し、心臓表面に移植する自家の再生医療等製品だ。

 両製品はいずれも2014年11月に施行された医薬品医療機器等法に基づいて承認申請されたもので、部会で了承されれば、早ければ9月中にも承認となる見通し。正式承認となるのか、後述する条件・期限付き承認になるのかは今のところ不明だが、医薬品医療機器等法(改正薬事法)と再生医療等安全性確保法(再生医療新法)という再生医療関連2法の下での事業化が具体的に動き出す。

 この再生医療関連2法は、日本における再生医療の状況を大きく変えた。特に再生医療等製品の事業化を目指す企業にインパクトが大きかったのは、ある程度の治験によって有効性が推定され、安全性が確認されれば前倒しで製造販売承認する「条件・期限付き承認制度」が設けられたことだ。

 これにより、再生医療の産業化を後押ししようとする国の姿勢を見てとって、数多くの企業が関心を示すようになった。再生医療に関わる企業の団体である再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の会員企業数は、発足時の14社から、8月24日現在10倍超の166社に増加するといった具合。会員企業には、バイオベンチャーや医療機器メーカー、研究用の機器・設備関係の会社に加えて、武田薬品工業、アステラス製薬、エーザイ、田辺三菱製薬といった製薬企業も名を連ねる。

 製薬企業の中で、再生医療に最も力を入れているのは恐らく大日本住友製薬だろう。2013年12月にiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞の実用化を目指すバイオベンチャーのヘリオス、2014年9月には慢性期脳梗塞に対する他家間葉系幹細胞医薬の共同開発などで米SanBio社と提携。自社でも神戸市に「神戸再生・細胞医薬センター」という研究拠点を設けているほか、今後、22億円をかけて細胞医薬の商業生産施設を建設する。同社では、再生医療の売上高が2030年には2000億円になると見込んでいるが、これは同社の現在の日本での売上高に拮抗する数字だ。製薬企業の中にはこのように再生医療の事業化に本格的に取り組む企業も出てきている。

 では、これで再生医療が産業として大きく開花していくのかというと、そうとは言い切れない。再生医療が本当に事業として成立するのか、まだ確信を得ることができないからだ。採算が合うだけの薬価が付くのかどうか。また、期限・条件付き承認を得た後、7年以内に有効性を証明しなければならないが、そのための要件もまだ定まっていない。承認は得たものの事業として赤字となるようでは、手掛けようという者はいなくなってしまいかねない。その意味で、今回承認が見込まれているテムセルHS注とハートシートに、どのぐらいの薬価が付くのかに、まずは注目したい。
                   

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