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記者の眼

日本の技術なしに登場し得なかったC型肝炎新薬

 昨年来、C型慢性肝炎を対象とする直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)が国内で続々と登場している。

 2014年9月、ブリストル・マイヤーズは「ダクルインザ錠」(一般名ダクラタスビル)と「スンベプラカプセル」(アスナプレビル)を発売。2015年5月にはギリアド・サイエンシズが「ソバルディ錠」(ソホスブビル)を発売し、7月には「ハーボニー配合錠」(ソホスブビル・レジパスビル)が承認された。さらにアッヴィは現在、配合剤(オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル)を承認申請中だ。

 これらのDAAsは、インターフェロン製剤の併用を要しないことや、従来薬より短期間で大部分がウイルス学的著効を達成できることから、高齢者を含めて幅広い患者に使われる見込み。

 臨床上の有用性が高いことは間違いないものの、DAAsは超高額な薬価でも注目を集めている。例えば、ソバルディには400mg錠1錠当たり6万1799円という薬価が付いた。成人では一般に、リバビリンとの併用でソバルディ400mgを1日1回12週間投与するが、その際のソバルディの薬剤費は約520万円。今後発売される見込みのハーボニーは、日本に多いジェノタイプ1型を対象とした国内臨床試験で、投与終了から12週後のウイルス学的著効率(SVR12)100%を達成しており、ソバルディを上回る薬価が付くのではとみられている。

 DAAsを用いた治療は肝炎治療費助成制度の対象となるため、患者が高額な治療費を支払う必要はないものの、医療費という形で税金が外資系製薬企業に流れ出ていくという構造である。C型慢性肝炎の患者数は約30万人、C型肝炎ウイルス(HCV)キャリア数は約190万~230万人と推定されており、単純に考えても数兆円が出ていく計算だ。

 ところでなぜ、外資系製薬企業が相次いでDAAsを開発できたのか。要因の1つは、長年抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)薬の研究開発で蓄積していた知見が、DAAsの開発に大いに役立ったためといわれている。実際、アッヴィの配合剤に含まれるリトナビルは、抗HIV薬としても使われている薬剤だ。

 そしてもう1つの要因は、HCVをin vitroで培養できる実験系が開発され、薬剤のスクリーニングができるようになったこと。実は、その実験系を開発したのは、現在、国立感染症研究所副所長を務める脇田隆字氏らの研究グループ。しかし、同グループにいたある研究者は「特許を取ろうとしたが、囲い込みはよくないと国からストップがかかった」と振り返る。

 もしこの特許があれば、海外へ流れ出ていった税金の一部が戻ってきたのに……。貢献といえば聞こえはいいが、日本の財政状況に鑑みると、「やっぱり特許を取っておいた方がよかったのでは」と思わざるを得ない。

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