日経メディカルのロゴ画像

 熱性痙攣は熱が上がって起こるのだから、解熱薬で熱を下げれば痙攣は起こらないだろう──。こうした考えに基づく小児の発熱時における解熱薬の投与は昔から行われてきた。子育て中の筆者も、子どもが38.5℃以上の熱を出したときは、「熱性痙攣を予防するために必要」と思って解熱薬を使ってきた。

 しかし先日、『日経ドラッグインフォメーション』8月号で「熱性痙攣 7つの疑問に答える」という記事をまとめるにあたり、熱性痙攣について取材する機会を得て、この考えが実は誤りであったことを知った。

 取材を進めると、むしろ現場の医師や薬剤師には「解熱薬の投与は痙攣発作を誘発するのではないか」との印象を持つ人が多いことが分かり驚いた。解熱薬を投与すると、効果が切れた時に熱が急に上がり、その際に痙攣を起こすのではないかというのだ。

 日本小児神経学会の『熱性けいれん診療ガイドライン2015』(診断と治療社)にはこうした問題への考え方が示されている。

 まず、発熱時の解熱薬使用について、ガイドラインは「熱性痙攣を予防できるとするエビデンスはなく、再発予防のための使用は推奨されない」としている。ガイドライン策定委員会の委員長を務めた、名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄附講座教授の夏目淳氏は、「複数の質の高いランダム化比較試験で解熱薬による痙攣の再発予防効果はないことが示されているため」と説明する。

 一方、医療関係者などが心配する解熱薬による痙攣の誘発について、ガイドラインは「解熱薬使用後の熱の再上昇による熱性痙攣再発のエビデンスはない」とした。夏目氏は、「今回の検討から、熱性痙攣の誘発を心配して解熱薬の使用を控える必要はないことも分かった」と話す。

 解熱薬は、熱性痙攣の既往歴があったとしても特別な使い方をする必要はない。熱性痙攣を起こしたことがない患児同様に、従来通り、水分が取れない場合や苦しくて眠れない場合、家族が不安を感じている場合などに頓用で使う分には問題はないということのようだ。

ジアゼパム坐薬の使われ過ぎを懸念
 ガイドラインでは、熱性痙攣の既往歴がある小児に対して、発熱時にジアゼパム坐薬(商品名ダイアップ坐剤)の投与を、「ルーチンに行う必要はない」とする指針を示している。これは、必ずしも必要ない小児にもジアゼパム坐薬が予防投与されている現状を受けたものだ。

 現状では、単純型の熱性痙攣を1回起こしただけの患児にも、ジアゼパム坐薬が予防投与されている場合があるが、ガイドラインでは、ジアゼパム坐薬の適応を(1)15分以上持続した痙攣(遷延性発作)を起こした場合、(2)家族歴や生後12カ月未満の発症などの危険因子が2つ以上ある痙攣を2回以上反復した場合──と、かなり限定した基準にしているのが特徴だ。

 これは、(1)単純型の熱性痙攣は繰り返しても認知機能への影響はないとの報告がある、(2)半数以上は一生に1回しか熱性痙攣を起こさない、(3)ジアゼパム坐薬はふらつきや眠気、興奮といった副作用が比較的よく出る──などの理由により、不要な投薬を減らしたいとの考えによる。

 なお、痙攣を起こしやすくすると考えられる鎮静性抗ヒスタミン薬と熱性痙攣との関係もトピックスの1つだが、ガイドラインでは、熱性痙攣の既往歴がある小児に対する鎮静性抗ヒスタミン薬の使用について、「発熱性疾患罹患中の使用は推奨されない」としている。

 ガイドラインは2015年3月に発行された。既に読まれた医師も多いと思うが、小児科診療に携わる機会がある先生方はぜひ一度目を通してみてほしい。


この記事を読んでいる人におすすめ