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記者の眼

もう少し何とかならないか、薬の添付文書

 ちょっと刺激的なこのタイトル、実は『日経メディカル』2000年7月号の特集のものである(写真)。

 特集は、4分の3もの読者医師が医薬品添付文書の記載に不満を抱いているという調査結果を紹介しつつ、「副作用表記があまりに煩雑」「『慎重投与』は意味不明」「判断難しい妊婦への投与」といった具体的な不満を提示。臨床医にとって有用な添付文書のあり方を提言する内容だった。

 その特集を掲載した号が発行されて早15年。だが、添付文書を巡る事情は、あまり変わっていないようだ。

不統一な薬効分類名
 「用字・用語が統一されていない」「臨床現場の使用実態や海外のエビデンスと添付文書の記載がかけ離れている」「表現があいまいで判断しにくい」──。1月25日、日本医薬品情報学会(JASDI)が東京都内で開催したフォーラムでは、医薬品添付文書に対するこんな不満が多いとする調査結果が報告された(添付文書の記載内容、多数の問題点が浮き彫りに)。

 その調査では、問題がある添付文書の項目として「薬効分類名」がトップに挙がっていた。例えば、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の薬効分類名は、製薬企業によって「持続性AT1レセプターブロッカー」「長時間作用型ARB」「高親性AT1レセプターブロッカー」などと分かれており、用語の不統一が検索性を低下させている点が問題点として指摘された。

 とはいえこうした問題は、主に病院のDI(医薬品情報)担当者などが気にする事柄であり、臨床的な意義は必ずしも大きくはない。それすらも不統一なのは改善を要する点だが、本質的な問題は、添付文書の表記が臨床医にとってあまりに不親切なことだ。そしてこの問題は、15年前とほとんど変わっていない。

 例えば臓器障害の副作用が報告されている医薬品の添付文書には、その発現をチェックするために、具体的な頻度は示さず「定期的に」あるいは「頻回に」血液検査などを行うよう求めている例が少なくない。また、「適宜増減」や「ゆっくりと静脈内注射」、さらには「一定間隔で」「急速投与」など、実際の処方に当たって医師を惑わせる表現を用いている添付文書も数多く存在する。

 上に挙げた事例は、いずれも『日経ドラッグインフォメーション』の創刊15周年記念セミナーで、山口大学医学部附属病院薬剤部の古川裕之氏が紹介したものだ。古川氏は、こうした表現が放置されたままの現状を踏まえ、事故につながりかねない医療現場での誤解をなくすために、医薬品の添付文書からあいまいな「文学的表現」をなくすよう訴えている(“あいまい表現”は情報伝達エラーの原因!)。

 医薬品が関与する医療訴訟では、医師側が治療の妥当性を主張しても、裁判所が添付文書の記載などを基に医師の過失を判断する事例が増えている。それだけに医薬品添付文書には、臨床現場の実態に即した、より具体的な記載が求められる。

 薬の添付文書の記載は、もう少し何とかならないものだろうか。

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