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記者の眼

東大医卒CGクリエイターに見る新医師キャリア

 先日、医師免許を持つサイエンス・医学専門の3DCGクリエイターの瀬尾拡史氏にインタビューする機会があった。世の中には、医師免許を持ちながら臨床医の仕事以外で活躍し、医療分野を支える医師たちがいる。

 「臨床医以外のキャリアを歩む医師」というカテゴリーで考えるのなら、瀬尾氏はその中の1人に分類されるかもしれない。しかしインタビューを行ううちに、瀬尾氏のキャリア形成は他の医師とはだいぶ異なることに気づいた。

 私が想像する「臨床医以外のキャリアを歩む医師」とは、2013年に出版された『ハグレ医者~臨床だけがキャリアじゃない!』(メディファーム株式会社編著、日経BP)に登場するような医師たちだ。

 厚生労働省の医系技官の医師、病院の経営企画室に勤務する医師、製薬会社で新規医薬品の研究を行う医師、バイオベンチャーを立ち上げた医師、ネットを利用して臨床医向けの情報を配信する企業を設立した医師、医業経営コンサルティングをする医師・・・。登場する医師たちは、臨床の経験を通して臨床現場を離れることを決意し、別の分野から医師の視点を生かして活躍している。キャリアのスタート地点は臨床医といえる。

 瀬尾氏の場合、キャリアのスタート地点が臨床医ではなく、3DCGクリエイターということになる。それって、別の仕事をしていて医学部に入学し直したということ?と思われるかもしれないが、そうではない。瀬尾氏は筑波大学附属駒場高等学校時代に、サイエンスや医学を分かりやすく伝える3DCGクリエイターになることを決心。「この仕事を行うには、医学を専門的に学ぶ必要がある」と思い立ち、東京大学理科三類に入学し、東大医学部医学科を卒業した。
 
 つまり、医学専門の3DCGクリエイターになるために、医学科で学び、臨床研修を行うことを選択したキャリア形成だったのだ。こんなキャリア形成もあるのかと改めて考えさせられた。

 臨床研修で同氏は、医療現場で3DCGを役立てる可能性を探った。呼吸器内科での研修の際、気管支の手術前に行うシミュレーションソフトが使いづらいという意見があることを知った。そこでソフトの操作性や見た目の改善を図るために、自身で3DCGの画像を制作することを決意。画像を制作するためには、胸部CTで撮影した大量の画像から気管支の部分だけを抽出して画像処理をする必要がある。「胸部CT画像を見て気管支を判断できるのは医学部で学び、解剖実習も行ったからだ」と瀬尾氏は話す。

 制作された画像は、手術のシミュレーション時のソフトウェアや、医師が患者に説明を行う際のコミュニケーションのツールとして利用できる可能性がある。制作した気管支の画像を基にして、気管支の構造を学べるiPad用のアプリも開発した。

 医学は特に正確性が求められるため、「自身が医師であるからこそ、医学的に妥当な画像や映像を制作することが可能だ」と瀬尾氏は話す。同氏との詳しいやり取りは、後日日経メディカル Onlineに掲載予定の記事をご覧いただきたい。
 

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