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記者の眼

新法施行で期待膨らむ国内再生医療の落とし穴

 今年、製薬・バイオ業界が期待を寄せる2つの法律が本格的に運用される。新たに立法された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律再生医療新法)」と、従来の薬事法を改正した「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律医薬品医療機器等法)」だ。

 いずれの法律も、再生医療遺伝子治療の普及を後押しする狙いで作られたもの。特に医薬品医療機器等法では、治験で有効性が推定され、安全性が確認された再生医療等製品(再生医療や遺伝子治療のことを指す)が条件と期限付きで承認されることになり、承認後に有効性が確認できれば本承認されるという規制緩和が実現した。

 再生医療新法も、医薬品医療機器等法も、2014年11月下旬に施行されたが、本格化に運用されるのはこれから。2つの法律の施行で、再生医療や遺伝子治療の開発が活発化し、条件と期限付きのものも含めて承認される品目数が増えるのは必至だ。

 ただし、法律の施行で再生医療や遺伝子治療がすぐに臨床で幅広く用いられるようになるかといえば、そうではないだろう。国内でこれまで承認された遺伝子治療製品はまだなく、再生医療製品は重症熱傷に対する自家培養表皮ジェイス」と、外傷性軟骨欠損症などを対象とした自家培養軟骨ジャック」のみ。

 現在承認申請中の再生医療製品には、虚血性心疾患による重症心不全に対する自家骨格筋芽細胞シートと、急性移植片対宿主病(急性GVHD)を対象とした他家ヒト間葉系幹細胞があるが、どの疾患も適応症が限られていることに加え、多くが患者自身から細胞を採取して利用する自家の再生医療製品なのだ。

 自家の再生医療製品は、患者の細胞を採取する際に侵襲を伴う上、個々の患者ごとのオーダーメードとなるため製造コストが抑えにくい。健常人から細胞を採取、培養して製造するレディーメードの他家再生医療製品に比べると、普及しにくいのが実情だ。そうしたわけで海外では、他家でできるものは他家再生医療製品を開発しようという現実路線が主流なのだが、日本では前述の通り自家が主流だ。それはなぜか。

 国内では、他家再生医療製品の原料となる細胞を入手できる細胞バンクが存在しないのである。他家の再生医療製品としては唯一、申請中のヒト間葉系幹細胞が挙げられるが、実はこれ、米国の健常なドナーから採取した骨髄液から間葉系幹細胞を分離し、拡大培養した細胞医薬品。他家ではあるものの、原料は国内調達されていない。

 国内で、骨髄液などを手に入れるには、日本赤十字社から提供を受けることなどが考えられるが、そうした原料調達を前提とした規制の枠組みもないのが現状だ。国内ではiPS細胞の細胞バンクの構築が進められているものの、健常人の間葉系幹細胞などを使って有用な再生医療製品が開発できるのであれば、コストの面などから“高級な”iPS細胞を使わなくとも事足りるだろう。

 厚生労働省のある関係者は、「他家再生医療製品で治療できる疾患は少なくない。規制緩和された日本で、そうした再生医療製品を開発しようという海外企業は数多くあり、今回の規制緩和のベネフィットを国内企業が享受する前に、海外企業が来てしまうのでは」と不安を口にしていた。
 

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