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記者の眼

ノーベル賞受賞者の予測にビッグデータが威力

 こちらの「記者の眼」コーナーでは5度目となります河田と申します。日ごろはバイオテクノロジーの専門誌「日経バイオテク」(1981年創刊)の編集などに携わっています。今回は、先々週から先週にかけて発表されたノーベル賞の話題をお届けします。論文の被引用数を集計したビッグデータが、ノーベル賞受賞者の予測で威力を発揮していることを紹介します。

 本欄ではこれまで、2013年1月29日に「ビタミンDサプリメントの広告表示とエビデンス」、同年6月20日に「原著論文をネットですぐに確認できるオープンアクセスは、難病のわが子を救う願いから始まった」、同年12月26日に「脳の栄養源ケトンでアルツハイマー病が改善、ゲノム編集技術で遺伝子の機能解析が加速」、そして今年5月19日に「睡眠の質と疲労の改善に新ソリューション続々」を掲載してきました。

 本題に戻りますが、ご存じのように、2014年のノーベル賞では、2012年の山中伸弥さん以来2年ぶりで、日本人研究者の受賞が決まりました。天野浩さん、赤崎勇さん、中村修二さんの3人が、青色発光ダイオード(LED)で物理学賞の受賞者に選ばれました。

 (弊社の)私事ですが、ちょうど今月初め、日経BPの医療局が入居しているビルのフロアの照明が、蛍光灯からLEDに変更になりました。原子力発電所の再稼働が困難になってしまった現在では、電力消費量を削減できるLED照明を広めることは、日本にとって重要な政策課題ともいえるかと思います。

 さて、物理学賞の受賞が決まった日本人3人のうち1人である中村修二さんは、米国のトムソン・ロイターがノーベル賞予測として位置付けている「トムソン・ロイター引用栄誉賞」に2002年に選ばれていた研究者でした(参照記事:トムソン・ロイター引用栄誉賞」選出の中村修二氏が、ノーベル物理学賞を受賞! )。

 トムソン・ロイターは、選出した各分野のコアジャーナルの掲載論文について論文の被引用数を登録したビッグデータのデータベース(DB)を構築して事業化しています。そして、同社はこのDBを活用したトムソン・ロイター引用栄誉賞の発表を2002年から恒常化しています。予測しているノーベル賞のカテゴリーは、生理学・医学と物理学、化学、経済学の4分野です。

 今週発表されたノーベル経済学賞のフランスのJean Marcel Tiroleさんも同じく、トムソン・ロイターが引用栄誉賞に選出していた学者でした(選出年は2007年)。

 中村さんとTiroleさんの2人を追加した結果、トムソン・ロイターがトムソン・ロイター引用栄誉賞で、ノーベル賞予測が的中した研究者・学者は37人になりました。

 今年は的中は2人だけでしたが、2011年のノーベル賞では該当4分野(生理学・医学、物理学、化学、経済学)で受賞した9人全てが、トムソン・ロイター引用栄誉賞に選出されていた研究者・学者でした。また、2013年のノーベル賞でも、該当4分野全てで、トムソン・ロイター引用栄誉賞の受賞者が含まれていました。

 トムソン・ロイター引用栄誉賞に選出された研究者・学者の総数は237人ですので、およそ引用栄誉賞受賞者の6人に1人が、実際にノーベル賞の受賞者に決まったことになります。

 この引用栄誉賞は、特に多く引用された論文の分析を基にして決定されます。論文は被引用数が多いほど、インパクトが大きいということは、このようなノーベル賞予測でも、改めて示されていると思います。

 ジャーナルのインパクトファクターも、論文の被引用数を基に算出されますが、こちらはジャーナルに掲載している論文全体の平均です。トップジャーナルでも、あるいはトップジャーナルであればこそ、再現性のない論文の比率が多いことが知られています。トップジャーナルに掲載された論文といえども、玉石混交であり、よく引用される論文はごく一部にすぎません。
 
 というわけで、研究者個々人の研究業績の評価では、論文発表したジャーナルのインパクトファクターは適切ではなく、発表した論文の被引用数が重要な指標となるかと思います。
 
 

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