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 医師主導臨床研究での不正が相次いで発覚している。ノバルティス ファーマ(以下、ノバ社)が製造販売するディオバン(一般名バルサルタン)の臨床研究不正は、厚生労働省がノバ社を刑事告発する事態にまで発展した。7月22日にノバ社と元社員が薬事法違反の疑いで追起訴され、東京地方検察庁特別捜査部による捜査は一旦、区切りを迎えた。

 今年に入ってから、ノバ社の慢性骨髄性白血病(CML)治療薬のタシグナニロチニブ)や、協和発酵キリンの腎性貧血治療薬ネスプダルベポエチン アルファ)の臨床研究でも不正が明らかになった。この2つの研究は、同一機序の薬剤を製造販売する企業が2社しかなく、激しいシェア争いの結果、不正な研究が行われたという点でよく似ている。今回は2社が公表した社外調査委員会の報告書を基に、医師主導臨床研究で不正が生じる背景と、考えられる再発防止策について述べたい。

「切り替え後の観察」の名目で薬を切り替えさせる
 タシグナの臨床研究は、薬をタシグナに切り替えた後の副作用の改善を観察するために行われた。ノバ社のグリベックイマチニブ)やブリストル・マイヤーズスプリセルダサチニブ)を服用するCML患者に副作用に関するアンケート調査を行い、副作用マネジメントを行っても改善しない場合、タシグナに切り替えて副作用の改善度を観察した。22医療機関の患者255人が参加し、9人がタシグナに切り替えられた。

 この研究では、ノバ社のMRが各医療機関のアンケートを運搬したり、医師が記入すべき評価を代筆していた。さらに、日本血液学会学術集会で発表されたスライドの一部を、ノバ社の学術担当が作成していた。学会発表の様子はビデオで撮影され、タシグナの販促活動に使われた。

 ネスプの臨床研究は、薬をネスプに切り替えた後のHb値、ヘプシジン値の変動を観察するために行われた。中外製薬エポジンエポエチン ベータ)、ミルセラエポエチン ベータ ペゴル)で効果不十分の腎性貧血患者に対し、ネスプに切り替えた後のHb値、ヘプシジン値の変動を観察した。当初のプロトコルでは、エポジンまたはミルセラを服用中のHb値10g/dL未満の血液透析患者15人を対象としていた。だが、元々ネスプを使っている患者や、Hb値が10g/dL以上の患者も研究に組み入れられ、最終的に30人が登録されたことが明らかになっている。

 この研究では、協和発酵キリンのMRが研究プロトコルや患者の同意説明文書の文案を作成していた。医師が協和発酵キリンの学術担当にデータの解析を依頼したため、データも学術担当に渡っていた。

医師主導臨床研究が「マーケティング戦略」に
 いずれの研究プロトコルも、自社製品への切り替えを前提としており、いわば競合他社の薬剤のシェアを奪うためのものだったといえる。研究プロトコルは、ネスプの研究では協和発酵キリンのMRが作成し、タシグナの研究ではノバ社のMRが医師と相談しながら作成していた。

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