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記者の眼

医療現場に林立するチーム、まとめ役は誰?

 日経メディカル7月号特集「輸液の誤解」の取材をする中で、栄養管理に関する二つの興味深いエピソードを耳にした。いずれも、NST(nutrition support team:栄養サポートチーム)やICT(infection control team:感染管理チーム)、PCT(palliative care team:緩和ケアチーム)といった、院内に組織されているチーム間の連携に関する話題だ。

 一つ目は、輸液のルート管理をNSTとICTのどちらが“牽引”すべきなのか。

 本来、静脈栄養(PN)管理は、NSTが得意とするテーマのはずだ。だが、「PNは合併症が多く、良くない栄養療法。PNよりEN(経腸栄養)を選択した方がいい」といった誤解がNSTの間に広がり、今やNSTの中にPNについて語れる専門家がいない自体に陥っているという。

 本来、両者は栄養管理の車の両輪となるべきだが、「NSTの関心はもっぱらEN」と日本静脈経腸栄養学会理事の井上善文氏(阪大臨床工学融合研究教育センター栄養ディバイス未来医工学共同研究部門)は嘆く。わが国でNSTがブームになり始めた1990年代半ばに、米国でPNの適応厳格化が提唱された。それもあって、EN偏重の考え方が、NSTの普及とともに国内に広がってしまったのだという。

 PNについては院内感染防止の観点から、院内のICTも目を光らせる。しかし、「感染管理看護師(ICN)は、『ルート管理はICNの仕事の一環』と言うが、かといって資格取得の際にPNについて十分に学んでいるわけではない」(井上氏)。本来、NSTがPNの必要性を正しく理解し、ICTとも良好に連携できればいいのだが、そうではない現状がPNの過度な抑制に拍車を掛けている。

主治医の主体的な関わりがカギ
 もう一つの話題は、癌治療の領域におけるNSTとPCTとの連携のあり方だ。

 終末期癌患者には、食欲不振や全身倦怠感、筋肉量減少などの「悪液質症候群」と呼ばれる病態が表れる。その時点で既に不可逆的な栄養不良に陥っており、輸液などで人工的にカロリーを補充しても体内で有効に利用されないばかりか、代謝上の負荷となり、栄養補給がかえって生体に有害となることが分かってきた。

 癌の治療期にはNSTが栄養指標や体重の改善を目指した治療を行うが、終末期に差し掛かれば、今度は栄養輸液をいかに減らしていくかの判断に迫られる。「NSTからPCTへ、患者の状態に応じた適切な治療の“ギアチェンジ”が求められる」と淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院(大阪市東淀川区)副院長の池永昌之氏は話す。ここでも、チーム間の連携が欠かせない。

 患者中心の医療を実現するために行われているチーム医療。職種間の壁を取り払うことが目的の一つだったが、今や医療現場には様々なチームができ、チーム間の連携をいかに図っていくかが新たな課題になっている。

 だが、チームの意見をまとめていけるのは、やはり主治医や受け持ち看護師でしかない。こと患者の栄養管理についてはNST任せにしがちとの声も耳にするが、こうした時代だからこそ、現場の医師や看護師の主体的に関わりが一層求められると言えそうだ。
 

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