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記者の眼

滞る新型インフルワクチン事業、原因に厚労省も

2014/06/25
河野修己=日経バイオテク

 厚生労働省は今年4月、新型インフルエンザワクチンの開発支援事業に関連して、北里第一三共ワクチンに罰則を課すことを決めた。助成金として支払い済みの300億円の一部について、返還を求めるという内容である。同社は3月に、約束していた規模の製造体制構築が不可能になったと発表していた。

 しかし、同事業の蹉跌の責任は北里第一三共だけにあるのではない。厚労省によるプロジェクト管理にも瑕疵があり、同省も一定の責任を負うべきものと筆者は考える。

 まずは、事の経緯を説明しておく。2009年、新型インフルエンザの大流行とワクチン不足が引き起こしたドタバタを経験した国と厚労省は、製造に時間の掛かる鶏卵培養型ワクチンに代えて、より短期間に製造できる細胞培養型ワクチンの製造施設を整備することを決定した。

 この方針に従い開始されたのが、「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」である。インフルエンザのパンデミックの発生から半年で、全国民分のワクチン供給を可能とすることを目的とするものだった。

 2011年8月には、補助金の支出先として4社を採択した。武田薬品工業(補助額は240億円)、化血研(同240億円)、阪大微生物病研究会(同240億円)、そして北里第一三共ワクチン(同300億円)である。

 採択後、各社は2013年3月末までの承認申請、2014年3月末までの承認取得を目指してワクチン開発を始めたが、2012年11月に異変が起こった。4社のうち阪大微研が、事業からの撤退を発表したのだ。理由は、フェーズI/II試験で十分な有効性が得られなかったため。ワクチンの抗原であるHA蛋白質換算で7.5μg/ドーズ、15μg/ドーズ、30μg/ドーズの3用量で試験を実施したが、抗体陽転率や抗体保有率などの数値が満足のいく結果にならなかったとみられる。

 阪大微研は最終的な投与量として15μg/ドーズを想定していたようだ。しかし、そのまま開発しても、承認を取得するには投与量を大幅に増やさなければならず、当初の計画と比較して数倍の製造規模が必要になる。100億円単位の追加投資を負担するわけにはいかない阪大微研は、撤退の道を選んだ。

 阪大微研が撤退を発表した時、業界関係者の多くが懸念したのが北里第一三共だった。というのも同社のワクチンは、阪大微研と同じ培養細胞、同じアジュバントを使用していたからである。ちなみに武田薬品と化血研、それぞれ別の製法を採用していた。
 

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