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記者の眼

異常が見つからない場合に患者にどう説明する?

 「総合診療医ドクターG」というテレビ番組をご存じの方も多いだろう。少ない手掛かりをヒントにして若手医師が徐々に鑑別診断を進めていき、最後に経験豊富な出題者が診断名を提示して答え合わせをする、症例検討会をクイズ形式にしたような番組だ。日経メディカルの取材や寄稿でお世話になっている医師がしばしば出演しているので、つい見てしまう。

 この番組を見ていて最近思い出したのは、1963年に東大第三内科教授であった故・冲中重雄氏が退官するときの最終講義の話だ。教授在任中の自分の誤診率を14.2%と発表し、あれほどの名医でも1割以上は誤診するのかと周囲の驚きを誘うと同時に、初心を忘れず常に自分を戒める姿勢が賞賛を集めたという。取材先の医師からこの逸話を聞いたときは、医学の道に終わりはないのだなと感銘を受けた記憶がある。

 誤診を減らすために大切なことは、先入観や思い込みにとらわれないことだろう。例えば、患者の年齢が若いほど悪性腫瘍の診断が遅れやすい、という研究があるそうだ。高齢になるほど癌のリスクは上昇するため、無理もないとも言える。さらに痔瘻からの出血が明らかであれば、内視鏡で大腸癌を調べる前に、「ご心配は要りません」と患者に説明してしまうかもしれない。

 誤診を減らす上で厄介なのが、逆に診断の手掛かりのない不定愁訴かもしれない。患者は症状や悩みを訴えるが、診察しても検査しても明らかな器質的異常がすぐに見つからない場合である。まれな疾患を疑ってさらに検査や画像診断を追加するべきか。しかし、追加した検査でも異常が見つからなければ、時間と費用が無駄になってしまう。不安症やうつ病などの影響を考えるべきなのか、それとも機能障害として対処法を考えるべきなのか? 

 さらに面倒なのは患者への説明の仕方が難しいことであろう。診断と治療の方針が決まっていれば歯切れよく説明することができる。しかし、異常が見つからず診断が付かない場合、どのように話せば患者の理解が得られるのだろうか。「異常は見つかりませんので、気のせいでしょう」というのが逆効果になりやすい典型例らしい。「話をよく聞いてくれない、私のつらさを理解してくれない」と受け止められてしまえば、ドクターショッピングが始まりかねない。

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