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記者の眼

基幹病院を驚かせた無床診療所の「連携室」開設

 今年4月の診療報酬改定で、病院が入院患者の「在宅復帰率」の向上を迫られるようになったことは、日経メディカル Onlineでも何度か取り上げてきた。

 この制度変更に現場がどう対応しようとしているのか、幾つかのケースを取材したが、中でもインパクトが強かったのは、病院からの退院患者の受け入れを増やすため、診療所が院内に「地域連携室」を開設したというエピソードだった(特集「地域を支える主治医の条件」)。患者確保の面で病院への依存度が高い在宅専門診療所ならまだしも、外来患者の多い一般の無床診療所が連携室を設けるなどという話は聞いたことがなかったからだ。

「なぜ診療所がわざわざあいさつに?」
 連携室を設けたのは、熊本市にあるせんだメディカルクリニック。整形外科がメーンの診療所だ。診療報酬改定の内容が明らかになった昨年12月に連携室を開設し、看護師とケアマネジャーを1人ずつ兼務で配置した。

 開設の目的は「逆紹介の提案」。自院の診療機能や受け入れ態勢などの情報を地域の病院に継続的に発信することで、逆紹介患者の受け入れにつなげようというのだ。

 在宅復帰率の引き上げを迫られた病院は、今後、退院後の受け皿となる連携パートナーを増やし、関係を強化しなければならない。「それなら、『こちらで受け入れられますよ』と自分たちから声をかけよう」――。こう考えた院長の千田治道氏は、連携室を立ち上げると、早速スタッフとともに地域の基幹病院にあいさつに赴いた。これには病院側も、「なぜ診療所の先生がわざわざ?」と驚いた様子だったという。

 急性期病院から直接患者を受け入れるとなると、状態の重い患者のフォローを依頼されることも多くなるが、自院のスタッフの陣容や、神経難病の在宅管理などを行ってきた実績から「十分対応できる」と判断した。

逆紹介に伴う患者の不安の軽減にも一役
 病院の入院・外来患者の逆紹介をスムーズに行うには、受け皿となる施設の体制や診療機能を正確に把握しておくことが不可欠であり、連携に熱心な病院は、これまでも連携先の情報収集に努めてきた。だが、病院の連携室の医療ソーシャルワーカー(MSW)や事務職員としては、遠慮もあって、開業医に対し「どこまで診られるか」を突っ込んで聞きづらいのが実情。「限られた面会時間で情報収集するのは難しい」と口にする病院の連携スタッフを、これまでの取材で何度か見てきた。

 結局、標榜科など公表されている情報を頼りに逆紹介するケースも多くなるが、患者から見れば十分な情報がないまま逆紹介されるのは不安であり、ただでさえ患者の理解を得にくい逆紹介が一層難しくなる。それだけに、診療所側からの的確な情報提供があれば、患者や病院主治医の安心感につながり、在宅復帰のハードルも下がる。

 病院側が欲するのは、診療機能に関する情報だけではない。その時点で在宅患者を何人受け入れられるかというリアルタイムの情報が必要なことあるし、逆紹介した患者の経過も気になるところだ。状態が悪く、近々入院に至る可能性が高い外来・在宅患者の情報も早めに把握しておきたいはず。そうした情報を診療所側から発信できれば、より緊密な連携が可能になる。

 外来の受診抑制傾向が長く続く中、患者数の伸び悩みに直面している診療所は少なくない。逆紹介による患者の確保は、診療所の増患の手段として重要性を増している。マンパワーの面から連携室の設置までは難しいとしても、「Win-Win」の関係構築を目指して連携病院への情報提供に力を入れる動きが、今後広がることも十分考えられる。

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