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記者の眼

睡眠の質と疲労の改善に新ソリューション続々

2014/05/19
河田孝雄=日経バイオテクONLINEアカデミック版

 こちらの「記者の眼」コーナーでは4度目となります河田と申します。日ごろはバイオテクノロジーの専門誌「日経バイオテク」(1981年創刊)の記事編集などに携わっています。本欄では1回目に「ビタミンDサプリメントの広告表示とエビデンス」(2013.1.29)を、2回目は「原著論文をネットですぐに確認できるオープンアクセスは、難病のわが子を救う願いから始まった」(2013.6.20)、3回目は「脳の栄養源ケトンでアルツハイマー病が改善、ゲノム編集技術で遺伝子の機能解析が加速」(2013.12.26)を掲載しました。

 今回は、5月12日(月)からの週で相次ぎ、取材・報道した睡眠と疲労の話題をお届けします。5月末に日本疲労学会、7月上旬に日本睡眠学会が開催されますので、参加なさる先生方も多いのではと思います。

 第10回日本疲労学会総会・学術集会は、5月30~31日に大阪市で開催されます。(開催案内はこちら

 日本睡眠学会第39回定期学術集会は、7月3~4日に徳島市で開催されます。(開催案内はこちら

 さて今回の最初の話題は、疲れと眠気を眼の動きから測定するアイウエアです。JINSブランドで展開しているジェイアイエヌが5月13日に発表しました。(プレスリリースはこちら

 人の眼球は、角膜側が正の電荷を、網膜側が負の電荷を帯びており、この電位差を眼電位といいます。眼球運動に伴って眼の周りの電位差が変動するのを検出する技術は、眼電位センシング技術と呼ばれます。眼の動きを継続的に捉えることにより、個人のより深いところから得られる深度と精度の高い「Deep Data」を取得できるとのことです。

 JINS MEMEでは、産学共同での技術開発により、アイウエアにも応用可能な3点式眼電位センサー(特許出願中)の開発に成功しました。アイウエアの特性を生かし、鼻パッドと眉間部分から検出される眼電位により、8方向の視線移動とまばたきのリアルタイム測定を実現しました。

 医学系の研究者は、慶應大スポーツ医学研究センター准教授の橋本健史氏が、この共同研究に参加なさっています。

 2つ目の話題は、プロドライバーの日常的な疲労管理に役立つ新ソフトウェアシステムの話題です。経済産業省が管轄する独立行政法人である産業技術総合研究所の技術移転ベンチャーであるフリッカーヘルスマネジメント(FHM、埼玉県新座市、代表取締役:原田暢善氏)が、このシステムを5月26日から発売すると、5月12日に発表しました。

 疲労を客観的に数値化できるフリッカー値検査法を、事務所などの液晶画面パソコンで迅速かつ高精度で行うことを可能にしたシステムを開発しました。

 フリッカー値検査法は、点滅する光のちらつきを認識する能力が、疲労に伴い低下するという現象に着目した疲労計測法です。1941年に提唱され、現在では人間工学および労働衛生の分野で広く利用されています。疲労により大脳皮質全体の活動が低下する状況を、視覚の刺激分解能の低下を指標にして計測します。

 これまでフリッカー値検査は定価が1台60万円ほどと高価な専用装置が使われ、数十cmの大きさがあり、検査の所要時間が1人当たり3分ほど掛かることから、プロドライバーの疲労管理にはほとんど利用されてきませんでした。

 これに対し、FHM Safetyは、自動車に搭載される運行記録用計器デジタルタコグラフのデータを管理する事務所のパーソナルコンピュータ(PC)を活用できます。PCなどの汎用端末の液晶画面で点滅刺激発生を行い、フリッカー値を計測します。検査の所要時間を1人当たりわずか50秒に短縮し、かつ検査データの信頼性を高めるために恣意性を排除する工夫を新たに導入しました。利用者ごとの疲労計測結果をデータベースに蓄積するので、利用者ごとに測定時の設定をカスタマイズでき、利用者ごとの日々の疲労状態の推移を分かりやすく表示できます。

 FHM Safetyの販売希望価格は初期導入費用が15万円で、メンテナンスとバージョンアップの費用は初期導入費用の15%程度に設定します。

 この成果の一部は、5月21~24日に岡山市で開催される第87回日本産業衛生学会で発表されます。(開催案内はこちら
 

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