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 最近、循環器関連で注目を集めている話題の1つが「肥満パラドックス」。肥満は糖尿病や心疾患などの重要なリスク要因であるにもかかわらず、肥満者の方が長生きするという現象をいう。心不全や糖尿病、末期腎不全などの患者について報告があるものの、今のところ定まった見解はない。欧米に比べ、痩せが多い日本人にとっては気になるところだ。

 3月の日経メディカル学会ダイジェスト:第78回日本循環器学会速報でも、肥満パラドックスが日本人の心不全患者にも当てはまる可能性を示唆した心臓血管研究所の後藤理人氏の発表を紹介したところ、アクセスが集中した。

 少々小太りの方が痩せている人より長生きするというデータは以前にもあったと思うのだが、ここに来て議論が盛り上がっているのは、Northwestern UniversityのMercedes R. Carnethon氏らが2012年に発表した糖尿病患者の肥満パラドックスの研究報告の影響と思われる。

 この研究では5研究のメタ解析を行い、2625人の糖尿病患者のデータを解析した結果、標準体重(BMI 18.5~24.99)の患者の方が、過体重/肥満(BMI 25以上)の患者よりも総死亡が有意に多く(補正後のハザード比2.08、95%信頼区間 1.52-2.85)、肥満パラドックスの現象が見られたというものだ(JAMA.2012;308:581-90.)。

 ところが2014年1月には、糖尿病患者の体重と予後に関するこれまでにない大規模なコホート研究の結果が発表された。Harvard School of Public HealthのDeirdre K.Tobias氏らが、1万1427人の糖尿病患者を15.8年間追跡したところ、2型糖尿病患者の死亡率は、標準体重群(BMI 22.5~24.9)が最も低く、Jカーブを描いた。痩せ群(18.5~22.4)を除けば、BMIが高い群ほど死亡率は高くなり、肥満パラドックスの存在は否定された(N.Engl.J Med.2014;370:233-44.)。

 糖尿病患者を前に、これまでさんざん痩せるよう指導してきた医師たちは、この結果を見てほっと胸をなでおろしたに違いない。「やはり肥満はよくないのだ」と。

心不全では肥満パラドックスの成立が濃厚?
 一方、肥満パラドックスが当てはまるのではないかとみられているのが心不全患者だ。

 肥満者は、高血圧やメタボリック症候群などを介して心不全になる確率が高いことは、フラミンガム研究などでも示されている。ところが、心不全患者のBMIと総死亡などの予後との関連を検討した研究報告では、年齢や性別などの補正後も、BMIは高い方が予後は良好だとする結果が多い。

 例えば、慢性心不全患者を対象としたCHARM試験でもBMIと死亡リスクが負の相関を示すことを報告しているが(Circulaton.2007;116:627-36.)、先の循環器学会での後藤氏らの研究発表も、日本人の心不全患者に肥満パラドックスが当てはまることを示唆していた。
 

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