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記者の眼

週刊文春の「遺伝子組み換え作物で発癌」報道に思うSTAP現象の今後

 週刊文春が4月17日号と24日号で、TPP(環太平洋経済連携協定)に関連して、遺伝子組み替え作物(GM作物)に対するネガティブキャンペーンを行っている。

 「米国産『危険食品』で子供が壊れる」というタイトルの17日号の記事にも「バイオ企業も食べないGM作物」などと刺激的な見出しが躍っていたが、24日号の「遺伝子組み換え作物から子供を守れ」という記事には、「抹殺された動物実験データ」としてフランス・カーン大学のセラリーニ教授の実験データと、「遺伝子組み換え作物を食べたラットは腫瘍だらけになった」という同氏の“衝撃的な”インタビューで構成されている。

 2012年11月、このデータがElsevier社が発行するFood and Chemical Toxicologyに論文として掲載されると(発表は9月)、世界的に議論が巻き起こった。

 しかし最終的にこの論文は、2013年11月に取り下げられている。取り下げに当たって同誌は生データの査読を要求し、結果的に虚偽はなかったものの、サンプルサイズと動物種の選択に問題があり、決定的な結論は導けないとした。

 同誌の論文取り下げの決定に対しては、「GM作物を販売しているモンサントに勤務したことがある研究者が編集に関わっていた」「取り下げには何らかの圧力を感じる」「取り下げるほどの理由はなかった」など、現在も火種がくすぶっている。

 この論文発表時の米国Forbes誌の記事によると、セラリーニ氏は批判を封じるために、正式な発表まで記者達と秘密保持契約(non-disclosure agreement)を結び、事前取材を不可能にしていたという。

 その甲斐もあってか、大きな腫瘍を持ったラットの写真を伴った突然の発表は大きな効果をもたらし、フランス首相が「本当なら欧州全域でGM作物を禁止した方がよい」と発言するまでに至った。

 発表後まもなく、研究者・研究機関からは、「プロトコールに問題があり、結論には何の根拠もない」という批判が相次いだ。また、ラットの腫瘍が大きくなるまで放置したことに対する倫理的な批判もあった。セラリーニ氏にはそれまでにも、同様の“前科”があったらしい。

 ……と、こうした経緯を振り返ってみると、「STAP細胞」発表時の理研の報道規制や、マスコミの過熱報道、文部科学相の発言、背中にヒトの耳が生えたマウス、などを想起してしまうのは私だけではないだろう。

 ちなみに、1990年代後半に背中に耳が生えた「バカンティマウス」をつくったのは、STAP論文の撤回に反対している米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授、その人である。

 週刊文春が、今ごろ、なぜこのネタに飛びついたのかはよく分からない。世界的には、もう完全に終わったはずのこの議論が、周回遅れとなった日本で再燃することになるのだろうか。

 なおSTAP現象に関しては、共著者である理化学研究所の笹井副センター長が記者会見であくまで仮説であることを明言したことから、検証を待つだけの状態。ただし、組織のガバナンスなど周辺事象に関しては、今後も長い間、追究されることになるだろう。

 そして論文が取り下げられ、たとえ検証が不首尾に終わったとしても、STAP細胞の存在は、亡霊のように何度も復活してくるのだろう。そういえばWEB上で何度もSTAPと検索したおかげで、某宗教団体の本の広告が必ず表示されるようになり、困っているのです。

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