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 「心房細動という、不整脈の一種です。この病気は、症状がなくても脳梗塞を引き起こすので、予防のお薬を飲んだ方がいいですよ」

 「でも、薬を飲むと出血するんでしょう? 出血は怖いから、ちょっと……」

 診察室でこうした会話を経験したことのある医師は、かなりの数に上るのではないだろうか。

 高齢化に伴い、わが国の心房細動患者は年々増えており、その数は100万人を超えるとみられている。心房細動の発作そのものが命を脅かすことは少ないが、QOLを低下させ、さらには年間4%の頻度(CHADS2スコア2点の場合。最大の6点だと年間18%)で心原性脳梗塞を引き起こす1)ことから、治療の重要性が叫ばれている。

 だが、脳梗塞予防を目的とした心房細動の抗凝固療法には、ほかのコモン・ディジーズとは異なる大きな特徴がある。それは、ハイリスク・ハイリターンであることだ。抗凝固療法は心原性脳梗塞という致死的な合併症のリスクを大幅に下げる一方で、出血という副作用も一定頻度で発生させる。例えば、CHADS2スコア2点の患者の場合、ワルファリン内服によって心原性脳梗塞の相対リスクは70%(絶対リスクにして2.8%)減少するが、頭蓋内出血が年間0.69%の頻度で発生する2)

 「脳梗塞が起きない」というベネフィットは目に見えず、「血圧」や「血糖」のような治療効果を表す分かりやすい指標もないため、なかなか実感することができない。一方、出血というリスクは非常にインパクトが強い。このため、「患者も医療者も『見えないベネフィット』よりも『見えるリスク』に目が向きがち」だ、と土橋内科医院(仙台市)院長の小田倉弘典氏は指摘する。

見えないベネフィットをいかに「見える化」するか
 当サイトで心房細動の連載を執筆してきた小田倉氏は、このたび上梓した著書『プライマリ・ケア医のための心房細動入門』(日経BP)の冒頭で、以下のように述べている。

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