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記者の眼

「難病法」で加速する希少疾患治療法の開発

 去る2月28日はRare Disease Dayだった。これは希少・難治性疾患の認知度向上を目的に2008年にスウェーデンで始まった活動で、日本でも2010年から2月最終日に様々なイベントが各地で開催されている。1つでも多くの疾患の治療法が開発されて患者が笑顔で生活できる、そんな未来への「第1歩」を共に踏みだそう、というのがその趣旨だ。

 折しもソチオリンピックのジャンプ団体で銅メダルを獲得した竹内択選手が、免疫疾患であるチャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)に罹患していたことを明らかにした。日本における年間新規発症数は100例、治療を受けているのは1800人程度といわれる希少疾患である。

 この疾患に対しては2月14日にグラクソ・スミスクライン社が、抗IL5ヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブ(mepolizumab)の第3相試験を開始したと発表した。試験は米国立アレルギー・感染症研究所との合意に基づいて行われるもので、希少疾患用医薬品開発における官民協力の例になると期待されている。

 そして2月12日に閣議決定されたのが「難病の患者に対する医療等に関する法律案(仮称)」、いわゆる難病法案である。今国会で成立すれば、医療費助成を既存の対象疾患には来年1月に前倒し施行、そして夏に新規疾患を入れて完全施行という、これまでにない形で実施される。それだけ医療費は患者にとって切実な問題で、対象疾患が56疾患から300疾患に、受給患者数が78万人から150万人に増加するのに伴い、自己負担額が増大することについて議論が巻き起こっているのも理解できる。

 しかしここでは、法律のもう1つの目的である、治療法の開発について紹介したい。

 欧米ではRare Diseaseという言葉が使われるのに対して、日本では「難病」、つまり福祉の面に重点を置いた言葉が用いられてきた。日本における難病対策は欧米に比べても早い時期から行われており、1972年に「難病対策要綱」が策定されてから40年が経過している。その間、医療費助成に加えて治療法の開発、療養環境の改善は着実に進み、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の人工呼吸器装着率30%は数%の欧米からみれば驚くべき数字だという。(余談だが、ALS患者を主人公にしたテレビドラマが始まってから、難病情報センターのウェブサイトへのアクセスが大幅に増えたそうだ)。

 しかしながら、治療法の開発に必要な情報の収集という観点からみれば、現在の調査票による患者登録は疾病概念の変化に対応しておらず、また福祉という観点から患者のためを思って、調査票への記入の際に主治医が鉛筆をなめるということもあったらしい(実際に紙に手書きしたものをPCに入力している)。

 今回の法律の運用指針となる、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会が2013年12月にまとめた「難病対策の改革に向けた取り組みについて」では、基本理念として「難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す」と、治療研究が最初に挙げられている。
 

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