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 先日、日本移植学会が開催したメディア・ワークショップに参加してきた。会場では、同学会の理事で国立病院機構水戸医療センター臓器移植外科医長の湯沢賢治氏による、「日本の臓器移植の現状」と題する国内の臓器移植登録システムについてのプレゼンテーションが印象に残った。

 まず予想外だったのが、わが国の臓器移植登録システムの統合が非常に遅れていたことだった。臓器移植と言えば公平性が大前提。1997年に臓器移植法が施行されてから、全国のどこの病院でドナーが発生しても、レシピエントは公平に手術を受けられる仕組みが整っていると思っていた。ところが、つい数年前までは信じ難いほど面倒な作業が必要だったらしい。

 湯沢氏は腎移植登録を例に挙げて説明した。(1)日本移植学会・日本臨床腎移植学会、(2)日本臓器移植ネットワーク(JOTNW)、(3)日本ABO血液型不適合移植研究会、(4)日本小児腎不全学会、(5)鏡視下ドナー腎摘の安全性研究班、(6)NCD(日本外科学会中心の前手術登録)──のそれぞれに別の書類で登録や集計を行っていたというのだ。

 これでは書類作成だけでも負担が大き過ぎる。登録システムが統合されていなかったため、枠組みを越えて公平性を期すには、学会やJOTNWなどたくさんの組織に患者登録しなければならなかったわけだ。

 こうした状況が改善したのは最近のこと。移植学会理事長でもある高原史郎氏が代表者の厚生労働科学研究「全ての臓器と組織移植症例の一元的な登録と追跡制度の確立ならびにドナーとレシピエントの安全性確保とQOL向上に関する研究」(2011~2013年度)が実施された。これにより、腎臓と肝臓を皮切りに全ての臓器と組織を対象にした登録追跡システムを構築する準備が進められることになった。

 ただし大きな課題も残っている。せっかくできた全臓器の登録追跡システムを研究班終了後は誰が維持するのか、サーバーの管理やメンテナンスはどうするのか、決まっていないままなのだ。これを継続的に活用しなければ、あまりにももったいない。

 湯沢氏の講演でもう1つ興味深かったのは、『わが国のend stage kidney disease(ESKD)の現況』という研究の紹介だ。これは日本透析医学会、日本移植学会、日本臨床腎移植学会、日本腎臓学会、日本小児腎臓病学会が協力して実施した調査報告だ。論文は各学会誌にそれぞれ掲載された。学会の枠を超えて、わが国の腎不全患者の全体像に迫ろうという意欲的なものらしい。
 

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