日経メディカルのロゴ画像

記者の眼

「選挙活動は人格改造」と語った虎雄氏の真意は

 日本最大の民間医療グループ「徳洲会」の公職選挙法違反事件で、窮地に立つ徳田虎雄前理事長。2012年12月の衆院選で次男の徳田毅衆院議員の選挙運動のため、全国から職員多数を現地に派遣し報酬を支払ったというのがグループの容疑の内容だ。

 政権与党の中枢を目指すという父子二代の野望を果たすため、医療・福祉の巨大組織は徳田一族の「集金・集票部隊」としてフル回転させられていた──。事件を巡ってはそんな報道が相次いでいる。

 ただ、筆者は先日、ある人物から虎雄氏に関する興味深いエピソードを聞いた。虎雄氏はかつて「選挙活動は人格改造」と熱く語っていたというのだ。今をさかのぼること20年以上前の話である。

 当時はちょうど虎雄氏が政党「自由連合」を結成し、党勢拡大に向け、全国的な選挙運動を始めた頃。政権獲得を目指した上での結党とはいえ、実際にはミニ政党の自由連合は苦戦を強いられるばかりで、虎雄氏が擁立した候補者らはことごとく落選していった。

 今回、虎雄氏について語ってくれたのは、実は、虎雄氏の下で“徳田流の運動論”を学び、現在は国政の場で活躍する人物。彼は政治家になる前の若かりし時分に、こうした光景を目の当たりにして、虎雄氏がなぜいわば負け戦に打って出るのか、理解できずにいた。そこで、その疑問を虎雄氏に率直にぶつけたところ、上記の人格改造発言が返ってきたのだという。

 「人格を改造すべきターゲットは、もっぱら病院長。病院長はともすれば頭が高くなりがちで、社会性に欠けてしまっている面も少なくない。地域の患者からの信頼を失えば、病院の経営にも支障を来すことになる。そんな病院長を鍛え直すために選挙活動は打って付けの業務」。これが虎雄氏の当時の持論だったそうだ。

 選挙活動をするとなれば、有権者である地域住民をよく知る必要がある。戸別訪問では時に平身低頭することも求められる。そうしたハードルがクリアできて初めて「病院長にふさわしい」とも、虎雄氏はたびたび口にしていたという。

 無論、そんなのはきれいごとで、票集めにつなげるには、イエスマンの職員しか要らないため、反乱分子を抑え込もうと、組織の長である病院長の人格改造に精を出したに違いないといった見方もあるだろう。ただし、語っていた事実は事実として、ハッとさせられた病院経営者もいるのではないだろうか。
 

この記事を読んでいる人におすすめ