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記者の眼

米国で3つの高血圧ガイドラインが登場したワケ
「Joint National Committee」ではなかったJNC 8

 年の瀬も押し迫った2013年12月18日、わが国でもよく引き合いに出される米国の「高血圧治療ガイドライン」の改訂第8版、通称「JNC 8」が、やっと発表された(関連記事)。

 現行の第7版(JNC 7)から実に10年ぶりの改訂ということで、私は早速、記事執筆のためにインターネットで情報収集を始めたのだが、その過程で、驚くというか、とても違和感のある事実に行き当たった。JNC 8が発表される前日の12月17日に、米国高血圧学会(ASH)は国際高血圧学会(ISH)と共同で、同じような高血圧治療ガイドラインを発表していたのだ(こちら)。

 さらに、その1カ月前の11月15日には、米国心臓協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)も、米疾病対策センター(CDC)とともに、やはり同様な高血圧の治療に関するガイドラインを発表していた(こちら)。

 細かいことをいえばASH/ISH版は「Statement」、AHA/ACC/CDC版は「Science Advisory」であり、JNC 8のようにEBMの手順に従って、clinical questionを設定して論文を集め、レビューし、推奨を提案した本格的なガイドラインではない。

 だが、2つとも降圧治療のアルゴリズム、第一選択薬、降圧目標値などを提唱しており、そもそもASH/ISH版では「Clinical Practice Guidelines for the Management of Hypertension in the Community」という表題が付いている。どちらも日常診療での利用を前提としたもので、臨床現場では実質的なガイドラインとして受け入れられるだろう。

3つのガイドラインがそれぞれ異なる降圧目標値を推奨

 問題は、これら3つのガイドラインで、降圧目標値や第一選択薬といった高血圧治療の基本となる事柄の推奨内容が、それぞれ微妙に異なっていることだ。例えばJNC 8では、60歳以上なら降圧目標値は150/90mmHgでよいとしたが、ASH/ISH版では18歳以上から79歳までは140/90mmHgを推奨しており、150/80mmHgでよしとするのは80歳以上だ。

 一方、AHA/ACC/CDC版では、年齢による降圧目標値の違いについては記載がないが、「(140/90mmHgよりも)より厳格な降圧が適切な場合がある」例示の1つとして、黒人、左室肥大や心不全症例、糖尿病や慢性腎臓病合併例とともに「高齢者」を挙げている。

 降圧治療のアルゴリズムも異なる。JNC 8では高血圧の重症度による区分けをしていないが、ASH/ISH版とAHA/ACC/CDC版では、stage 2の高血圧(160/100mmHg以上)では最初から降圧薬の併用療法を推奨している。

 さらに第一選択薬に関しても、JNC 8では黒人以外ならサイアザイド系利尿薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の4種類(黒人はサイアザイド系利尿薬とCa拮抗薬の2種類)を横一線で推奨したが、AHA/ACC/CDC版はJNC 7と同様にサイアザイド系利尿薬を優先して推奨している。一方、ASH/ISH版では人種と年齢を組み合わせて推奨内容を分けた。
 
 

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