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 ロドデノール「4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール」を含む美白化粧品の使用後に、白斑色素脱失を起こす人が相次いで見つかった(関連記事:2013.10.8 トレンドビュー「化粧品使用後の『白斑』を見つけたら」)。ロドデノールは、化学構造の似たラズベリーケトンの製造従事者に白斑が生じたことが開発のきっかけだったにもかかわらず、市販後、長期にわたって色素脱失のリスクを見抜けなかったことが、被害の拡大を招いた。

 ロドデノールの審査報告書によると、承認前に、(1)健康な成人(45例)に紫外線を照射し、プラセボ(基剤)と比較して色素沈着の度合いを見た試験、(2)健康な成人(15例)に紫外線を照射し、既承認製剤と比較して色素沈着の度合いを見た試験、(3)健康な女性(329例)の顔面に1日2回、2カ月間塗布し、自己申告による有効性を見た試験、(4)健康な成人(12例)の手の甲に高濃度の成分を1日1回、6カ月間塗布した長期連用試験――という4種類の臨床試験が行われていた。審査報告書を読む限り、少なくともこれらの臨床試験では、気になる色素脱失は見られなかった。

 ロドデノールは医薬部外品の有効成分であり、医薬品ではない。だが、市販前の医薬品の限界としてよく知られている「5つのtoo」(Drug Intell Clin Pharm. 1987;21:915-20.)が見事に当てはまる。ちなみに「5つのtoo」とは、(1)症例数が少ない(too few)、(2)投薬方法が単純(too simple)、(3)投薬期間が短い(too brief)、(4)対象者の年齢制限(too median-aged)、(5)特殊な患者の除外(too narrow)――を指す(日本薬剤疫学会講義用パワーポイントより)。

 医薬部外品は、いったん承認され販売されたら、医薬品とは比較にならないほど多くの人に使われる。そのため滅多に起きないことでも起こる可能性があり、だからこそ市販後の安全対策が重要だったはずだ。それなのにここまで被害が拡大した原因として、カネボウ化粧品の第三者調査報告書は、担当者の思い込みや組織体制の問題を挙げていた。私はそれらに加えて、消費者自身がリスクを意識するきっかけがほとんどないこと、さらに、消費者が使用方法(塗る量や塗り方など)について誰からも教わる機会がないこともあったのではないかと思う。

 ロドデノール含有化粧品に限らず、身の回りの多くの製品には潜在的なリスクがある。消費者が普段からそうしたリスクを意識し、リスクを避けるための行動を取れればよいのだが、現実にはなかなか難しい。製品の送り手と受け手の間に“情報の非対称性”があるにもかかわらず、使用の最終判断は受け手側の消費者に任されている。インターネットが普及して様々な情報が簡単に手に入るようになったために、“情報の非対称性”は薄れたように見えるが、私は逆に、消費者任せの傾向がいっそう強まっているように感じる。

 もしこれが化粧品ではなく塗り薬だったとしたら、販売の最前線にいる薬剤師が“情報の非対称性”を埋め、消費者(患者)に使用方法をアドバイスしたり、異常を早期に発見したりできたかもしれない。消費者が「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、薬剤師はその専門性を消費者とのリスクコミュニケーションに生かしてほしい。

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