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記者の眼

病歴を伝えそびれたために生じた副作用は、患者の自己責任?

 一般用医薬品(OTC薬)のインターネット販売のルールづくり。ようやく出口が見えてきたが、私はどうも釈然としない。

 薬剤師以外の読者にとっては、なじみが薄い話題かもしれない。あらましはこうだ。

 2009年の薬事法改正の際、厚生労働省は第3類医薬品以外のOTC薬について対面で販売することを求め、インターネットによる販売を禁じる省令を出した。だが2013年1月、ケンコーコム(東京都港区)らが国を相手にOTC薬のネット販売権の確認などを求めていた行政訴訟で、最高裁判所は、「OTC薬のネット販売を一律に禁じる省令は、薬事法の委任の範囲を逸脱しており無効である」との判断を下した(※1)。

 現行の改正薬事法や省令は、店頭販売のみを想定したもの。そこで厚労省は2月、販売形態にかかわらず適用できるルールをつくるべく、検討会を設置した。だが検討会は、ネット販売反対派と推進派の水掛け論に終始。結局、新たなルールの方向性すら示せないまま、6月13日にいったん幕引きとなった(※2)。

 その翌日、安倍晋三首相が「日本再興戦略」を発表し、OTC薬のネット販売の原則解禁を宣言した(※3)。ここでようやく、厚労省やネット販売反対派は、重い腰を上げることになる。8月に設置された作業グループは、わずか4回の会合をへて9月20日、OTC薬の新たな販売ルールを大筋でまとめた(※4)。10月15日から始まる臨時国会で、新ルールを盛り込んだ薬事法改正案について審議される見通しだ。

 私はこの7カ月にわたり、15回、延べ30時間以上に上る検討会を傍聴してきた。一時、反対派と推進派が互いの欠点をあげつらい、ののしり合う様子にへきえきとしたり、議論が硬直したまま時間だけが過ぎていく状況に、他人事ながら焦ったりした。そんな身としては、終盤やや駆け足だったものの、新たなルールの枠組みがまとまったことに安堵したのも事実だ。一方で、机に積まれた膨大な傍聴記録を読み返してみると、反対派と推進派の泥仕合の中で、最終的にサービスを享受しリスクを負うことになる消費者の貴重な声が埋もれがちだったことが残念でならない。

ウェブ画面上でのやり取りは医療になじむか?
 9月11日、「一般用医薬品の新たな販売ルール策定作業グループ」の第3回会合でのこと。この日は、厚労省が提示した新ルールのたたき台に沿って、メンバーからの意見聴取が行われていた。

 現状、第1類医薬品を販売する際は、薬剤師が書面を用いて適正使用のために必要な情報提供を行うことが、薬事法で義務付けられている。日本薬剤師会が作成した「一般用医薬品販売の手引き」では、これに加えて、薬剤師が購入者から症状などを聞き取った上で、適切な医薬品を選んだり、必要に応じて受診勧奨を行うことを推奨している。新たなルールづくりの議論では、この流れをネット販売、つまりウェブ画面の表示や電子メールによるやり取りによって、どのように実現させるかが争点となった(遠隔医療のように、ネット販売においてテレビ電話を使用させるという厚労省案は、推進派の反発により早々に姿を消した)。

 厚労省のたたき台では、第1類医薬品のネット販売においては、(1)購入者(使用者)が薬剤師に対し、症状や副作用歴、既往歴、医療機関の受診歴などを伝える、(2)薬剤師が使用者の状態に応じて、個別に情報提供(必要に応じて受診勧奨)を行う(自動応対・自動返信は不可)、(3)購入者が「情報提供を受けて理解した」旨を薬剤師に伝える――という、“1往復半”のやり取りを義務付けることが提案された。

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