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記者の眼

「パンツを下げることをためらうな」! 救急医療の現場で聞いたワザいろいろ

 若手医師と医学生を対象とした季刊誌「日経メディカルCadetto」の秋号では、第2特集で「現場発!救急医療を生き抜く心得」をまとめました。救急にやってくる“困った患者”とのトラブル解決術や、他科の医師へのコンサルテーションをスムーズに行うコツなどを紹介しています。

 その取材で、Cadetto.jpの連載「救急いばら道」でもおなじみの、八戸市立市民病院救命救急センター長、今明秀氏にお会いしました。

 八戸市立市民病院といえば、ドクターカー、ドクターヘリを備える地域の中核病院です。医師が直接患者の発生場所まで行って治療するドクターカー、ドクターヘリでの診療は、救急救命士が15~20分ほどかけて搬送してきた患者を救急救命室で治療するのとは状況が大きく異なります。本特集では、症状や病態がはっきりしない段階で迅速な判断が求められる緊迫感を伝えようと、ドクターヘリ、ドクターカーに乗る医師としての心構えをたっぷり掲載しています。

 …その結果、今先生にたくさんうかがった救急診療のお話を、秋号には載せきれなくなってしまったのでした。そこでここでは、今先生に教えていただいた「救急診療での見逃しを防ぐコツ」の中から、特に印象深かったネタを3つ、ご紹介します。

自分で歩いて来られるほど“元気”な腹部外傷患者
 まずは、独歩で来院した腹部外傷患者の診かたです。もともと腹部外傷では見逃しが起こりやすい傾向にありますが、特に「血圧が下がらない小腸損傷」では見逃しの頻度が高まります。小腸が穿孔すれば、やがて腹膜炎を起こしますが、穿孔直後は症状が軽かったり、なかったりするため、独歩で“元気”に来院する患者も少なくないのだそうです。

 「『お腹をぶつけて、押すと少し痛いです』と訴える患者の腹部にシートベルトの跡があれば、医師は『シートベルトによる鈍的腹部外傷かな?』と考えます。このような場合は念のため1泊させれば十分と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし症状が現れるのは受傷から24時間以上経ってからのこともあり、翌朝退院した後に症状が現れ、救急搬送される可能性があるのです」(今氏)。

 軽症患者を1泊入院までさせたのだからもう十分、という先入観を持たず、当日か翌日、あるいは両日ともCTを撮る、腹部所見と問診を念入りに行うなど、しっかり処置をすることで、見逃しは防げるのだそうです。

「骨折だからX線撮影」だけでは見落としのキケン
 膝側で大腿骨骨折が起きた場合、患者は強い痛みを訴えます。この場合、念頭に置かなければならないのは、膝窩動脈の損傷がないかを確認することです。膝窩動脈損傷を確かめるには造影CTによる血管造影が必要ですが、手軽な確認方法として今氏は、「足背の動脈の触診」を勧めます。「左右差があれば骨折+動脈損傷による虚血が起きていることが分かります」(今氏)。

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