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記者の眼

米国癌研究会議(AACR)で最後の質問に立ったのは?

 第11回日本臨床腫瘍学会学術集会が、8月末に仙台で開催された。

 同学会では2年前から、癌患者団体・支援団体による参加型プログラムとして、 ペイシェント・アドボケイト・プログラムを開催している。日本の癌医療をよりよいものにするためには、患者の視点に立った医療の在り方を常時検討する必要があり、その実現のためには患者会や患者支援の会との連携が必要であるとの認識による。

 しかし残念なことに、参加者にある誤解が生じていた。「今回の学会は、患者アドボカシーのセッションしか参加できず、学会の発表を聞くことがなくて悲しい」と、患者関係者の1人が話したのだ。公開が原則の学会がまさかと思い、開催概要の参加費のところを見ると、確かに、「医師/企業等(医療関係者)」、「メディカルスタッフ」、「学生」しか選択肢はなかった。

 そこで学会事務局に問い合わせると、非会員(医師/企業等〔医療関係者〕)として登録すれば、参加できるとのことだった。患者関係者にその旨を伝えたところ、「そうだったんだ。知らなかった」とおっしゃった。まだまだ、患者関係者に対する配慮が足りなかったようだ。

 米国の中心的な癌の学会である米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国癌研究会議(AACR)では、患者も通常のセッションに参加している。

 今から数年前、ASCOの助成金プログラムを利用して参加した日本人患者の話を「がんナビ」というサイトで取り上げたことがあるが、そのことについて日本の医師からは「医療に関する基礎的知識がない患者が学会に参加する事にリスクを感じる」、「患者が参加する事で学会が混乱しないか」、「患者が癌医療に関与する事で何がどう変わるのか?」などという意見が多かった。

 これに対してASCOの関係者は、「患者の積極的な関与なくして、癌関連の法律、政策を変える事はできない。癌研究費削減の問題に直面している米国では、ASCOを中心に学会と、患者・支援団体の連携がますます強まっている」と説明したものだ。

 その後、日本最大の癌関連学会である日本癌治療学会でも患者のスカラーシッププログラムを開始し、日本臨床腫瘍学会も後に続いた。しかし、その意識が関係者全員に共有されているというところまでは行っていないようだ。

 もうかなり昔のことになる。大腸癌の抗EGFR抗体の効果とKRAS遺伝子との関係が初めて議論されたAACRの会場でのことだ。インパクトの大きい発表であったため、数多くの質問者が列をなし、熱心な議論が行われ、時間を大きくオーバーし、会場がぴりぴりしていた。最後の質問者がマイクの前に立った時、座長は「短くね」と声をかけた。

 その質問者はこう語った。「私は患者です。今日、この場で皆さんがこんなに真剣に議論をしているのを聞けて、とてもうれしかったです。心より感謝します」。その途端、張りつめた会場の雰囲気は一気に変わり、参加者たちの顔に笑みが浮かんだ。

 こんな風景を、日本の学会でも見たいものである。

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