日経メディカルのロゴ画像

 癌患者向け情報サイトがんナビでは、7月29日から骨転移に関する連載「知っておきたい骨転移」を開始しました。

 連載を開始するきっかけは、記事を執筆いただいている大阪府立成人病センター整形外科副部長兼リハビリテーション科部長である橋本伸之先生が最近上梓された、骨転移に関する書籍を拝見したことです。

 骨転移そのものは生命を脅かすものではありませんが、骨折や麻痺を引き起こし、QOLを大きく低下させてしまいます。骨折や麻痺の兆候に自ら(あるいは家族が)気がつき、早期に受診することで、QOLの低下を防ぐことが大切だと言います。そのため、橋本先生は「全ての癌患者さんが、診断を受けた時点で予備知識として知っておくべき」と考え、書籍をまとめるとともに、骨転移に対する認識や対処法を「骨転移リテラシー」と名付けました。

 一方、最近、腎癌研究会が開催した市民公開講座を取材する機会がありました。この市民公開講座は、専門医が「腎癌とはどのような病気か」「どのように見つかるか」「どのような手術があるか」「どのような薬で治療するか」という点を分かりやすく解説するものですが、目玉の1つが、腎癌と診断され、今は復調されたタレント・俳優の小西博之さんの講演「コニタンの闘病日記」です。

 小西さんは日本全国で数多くの講演をなさっており、話をお聞きになったことがある方もいるかもしれません。考えさせられることが多い、笑って泣ける、非常に面白い講演です。披露される数々のエピソードは、腎癌と診断されるまでの経過や手術を受けるときの気持ちなど、とても興味深いものですが、エピソードの1つに「突発性難聴」もありました。「朝起きて、突然耳が聞こえないなどの症状を感じたら、我慢せずにいち早く病院に行けば、今は治ることを知っていますか?」。聴講者へのそんな問いかけです。聴講者の中から「知らなかった」という声が上がりました。マイクが不要なほど声が大きい小西さんの講演は、感情豊かに進んでいき、「腎癌リテラシー」や「突発性難聴リテラシー」を高める、記憶に残るものでした。

 古くは「減塩運動」、最近では「メタボリックシンドローム」「慢性腎臓病(CKD)」「ロコモティブシンドローム」など、対象者数が多い疾患では、大々的な啓発活動が行われています。今や一家に1台、家庭血圧測定器があるというところまで認知度が高まった高血圧などは成功例の1つでしょう。

 一方で、ある医師から聞いた、「最近、患者は書籍やインターネットで自分の病気のことをとても詳しく調べるようになった。ただ、調べるのは『患者』になってからであり、健康なときは、いくらテレビや書籍などで情報が目の前にあっても、それを記憶しないし、認識さえしないかもしれない」という一言は自らも実感するものでした。

 「例えば、家族が入院して治療方針の説明を同席して受けるとき、親族・友人が罹患した疾患を書籍やインターネットで調べるときなどは、情報が記憶に残りやすい。記憶に残れば波及効果があるので、そのとき触れる情報は、正確性も含めとても重要なものとなる」と言われ、「身が引き締まる思いです」と申し上げましたが、その医師が「私もだ」と言われたことは印象的でした。

この記事を読んでいる人におすすめ