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記者の眼

大手も積極姿勢に転じたオーファンドラッグ開発
企業側は薬価に不満も

2013/07/29
河野修己=日経バイオテク

 最近、製薬企業のオーファンドラッグへの取り組みに変化が現れている。従来、限定的な売り上げしか見込めないオーファンドラッグの研究開発に対して、製薬企業は積極的に関わってこなかった。それを担っていたのは、アカデミアやベンチャー企業が中心だった。その傾向は海外、日本とも同様だった。

 しかし、2010年から2011年にかけて、米Pfizer社や英GlaxoSmithKline(GSK)社など海外のメガファーマが希少疾病領域へ相次いで参入してきた。例えばGSK社は、遺伝子病であるハンター病ファブリー病などの治療薬の臨床試験開始を準備中だ。

 象徴的だったのは、フランスSanofi社による米Genzyme社の買収。Genzyme社はオーファンドラッグ開発では最大手の企業で、Sanofi社は約200億ドルを投じて2011年4月に子会社化した。

 この動きの背景には、オーファンドラッグが決して小さなビジネスではないということが明確になってきた点があるようだ。オーファンドラッグはどの国でも高い薬価が付きやすい。発売当初の売り上げは小さくても、グローバル展開や適応拡大に成功すれば大型品に成長する可能性がある。

 実際、非ホジキンリンパ腫治療薬「リツキサン」の2011年売り上げは65億ドル、慢性骨髄性白血病消化管間質腫瘍の治療薬「グリベック」は46億ドル、発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬「ソリリス」は7億ドルに達している。米国でこれまでに承認されたオーファンドラッグは約400。しかし、希少疾病と見なされている疾患は全部で約7000ある。新薬開発の余地はまだ膨大に残されているわけだ。

第一三共と日本新薬が筋ジス治療薬の開発を開始
 日本でも大手企業によるオーファンドラッグ開発への参入が加速している。例えば、今年2月に第一三共が、5月には日本新薬が、共にデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬の開発開始を発表した。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは遺伝子の異常が原因の疾患。異常部位によっていくつかのタイプがあり、第一三共と日本新薬はそれぞれ異なるタイプのDMDの治療薬開発に取り組む。国内患者数は数千人程度でしかない。

 また、大日本住友製薬は3月に、米国のバイオベンチャーであるEdison Pharmaceuticals社とライセンス契約を締結。ミトコンドリア病の治療薬の権利を、5000万ドル(約50億円)を支払って獲得した。ミトコンドリア病の発症確率は、10万人に16人ほどと推測されている。

 オーファンドラッグの中で、国内患者数が5万人以下、医療上の必要性が高い、開発可能性が高いという条件を満たす品目は、厚生労働省から希少疾病用医薬品としての指定を受けることができる。指定された品目に対しては、申請後に優先審査品目として扱われる、再審査期間(独占的に販売できる期間)が最長10年に延長される、税制上の優遇措置を受けられる、医薬基盤研究所から助成金を受け取れるなどの支援措置がある。

 また、政府が5月に決定した「科学技術イノベーション総合戦略」では、オーファンドラッグの研究開発促進が重要テーマの1つとして挙げられている。今後、オーファンドラッグに関しては、承認取得に向けた支援策が強化されることはあっても、後退することはないと思われる。

 ただし、承認を取得した後に、最後のハードルが残っている。薬価がいくらになるかだ。オーファンドラッグの薬価については、企業側の不満が聞こえてくる例が少なくない。

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