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 欧米では使うことのできる薬が、日本では適応外、または未承認であるために使えない──。そんなもどかしい思いを経験したことのある医師は少なくないだろう。

 特にまれな癌や難病、小児慢性疾患など患者数が少ない領域では、高いコストが掛かる薬の開発に製薬企業が手を出しにくく、未承認薬や適応外薬の問題がとりわけ大きい。欧米では、致死的な疾患で代替治療がないなどの場合に、未承認薬の使用を例外的に認めるCompassionate Use制度(米国ではExpanded Access Programと呼ぶ)が以前からあるものの、日本ではそうした制度が整っていなかった。

 だがここにきて、厚生労働省の様々な取り組みにより、事態が大きく改善してきている。目玉の一つは、医師主導治験の環境整備だ。

臨床しながらでも実施しやすくなった医師主導治験
 医師主導治験とは、製薬企業が手掛けない未承認薬などを医師自らが開発できるよう、2003年の薬事法改正で導入された仕組み。ただしこれまでは、必要な書類手続きがあまりに膨大で、治験に関わる専門スタッフの人件費の手当ても乏しかったため、医師の負担が尋常ではなく一部で医師“死亡”治験と揶揄されていた。

 そんな日本の医師主導治験が抱える問題を解消するために、厚労省はさらなる改革を断行。医師主導治験に参加する医師の負担が大幅に削減され、医師が臨床をしながら治験に参加することがようやく可能になってきた。

 ここ数年来、医師主導治験に関連して厚労省が行った主な改革は、(1)手続きの大幅な簡略化、(2)臨床研究中核病院の整備、(3)PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサポートの充実化──の3点に集約される。その内容を順に見てみよう。

 まず、「手続きの簡略化」について。厚労省で一連の改革に携わった宮田俊男氏(厚労省医薬食品局審査管理課課長補佐)は、「関連する省令などを丁寧に見直し、医師主導治験が盛んに行われている米国並みに手続きを簡略化した」と説明する。

 例えば、医師主導治験は通常、5~10施設が連携して取り組むが、従来は申請書類を一人の治験責任医師が代表してPMDAに届け出ることができなかった。そのため、山のように大量の申請書類を施設ごとに提出したり、複数の施設が一緒に書類を提出する場合も、各施設の治験責任医師が銘々に書類に名前をサインした上で提出していた。

 2012年末のGCP省令(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)などの改正でこうした煩雑な手続きを廃し、一人の治験責任医師が代表して書類申請することを認めた。他にも、治験分担医師の名前を全員分届け出なくてよい、新たに治験に加わる施設の届け出を簡略化する──などの見直しを行った。これにより申請書類が従来の5分の1から10分の1ほどに圧縮できたとの声があるという。

 さらに、医師主導治験の取りまとめ役を担う臨床研究中核病院を10施設選定した(表1)。1施設当たり年間約6億円の補助金を給付し、表2のような機能を担うべく、各施設には、臨床研究コーディネーター(CRC)、データマネジャー、生物統計家、モニタリング・監査員などの専門的なスタッフを常時雇用し、事務局機能を果たせるようにした。

 臨床研究中核病院が書類申請やデータの管理などを取りまとめ、届け出など事務手続きも代行してくれるので、これまでに比べると大幅に少ない負担で医師主導治験のネットワークに参画できるようになったわけだ。

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