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記者の眼

亜急性期は急性期? 迷走する「報告制度」の議論

 まさかこれほどこじれるとは思わなかった。現在、厚生労働省で検討が進んでいる病床機能報告制度に関しての話だ。
 
 同制度は、病院・有床診療所が有している病床の機能の現状と今後の方向性を毎年、病棟単位で都道府県に報告させるというもの。報告を受けた都道府県は、それぞれ地域の医療需要の将来推計と照らし合わせながら、医療機能の分化と連携を推進する「地域医療ビジョン」を策定。その上で、ビジョンを2018年度以降の医療計画に反映させて効率的な医療提供体制の構築を目指す。

 厚労省では2014年後半をめどに報告制度の運用を開始し、2015年中ごろから各都道府県が地域医療ビジョンを策定するスケジュールを描く。今秋に予定される臨時国会に関連する医療法改正法案を提出し、実施に向けた準備に着手したい考えだ。

集中砲火を浴びた厚労省案
 この報告制度の具体的な中身を詰める作業を担っているのは、厚労省の「病床機能情報の報告・提供のあり方に関する検討会」。当初の予定では今年6月には報告制度の概要が固まるはずだった。ところが、肝心要となる、各医療機関に報告を求める医療機能の区分がいまだに決まらず、揺れに揺れている。

 厚労省が5月30日の検討会にたたき台として提示した医療機能の分類は、(1)急性期、(2)亜急性期(仮称)、(3)回復期リハビリテーション、(4)地域多機能(仮称)、(5)長期療養――の5種類。

 このうち、(4)の「地域多機能」は、一つの病棟で複数の医療機能を持つイメージで、「医療資源が少なく機能分化が難しい地域」で、病棟数が2病棟以下の医療機関に限るという原則を示した。また、(2)の「亜急性期」については、「主として急性期を経過した患者、在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者に対し、在宅復帰に向けた医療を提供する機能」と定義。ポストアキュートとサブアキュートの双方を含む概念とした。

 だが、この厚労省案に対し、医療関係団体選出の委員を中心に異論が相次いだ。集中砲火を浴びたのは地域多機能と亜急性期。「今後、都市部での高齢化が大きな問題であることを踏まえれば、都市部でこそ地域多機能が必要」(日本病院会副会長の相澤孝夫氏)、「この分類では高齢者救急は亜急性の医療機関が担う印象になるが本来、一般急性期でみるべき」(日本医療法人協会会長代行の加納繁照氏)といった意見が寄せられ、厚労省は案の練り直しを迫られることになった。

機能定義の議論がこじれる理由
 なぜ、報告すべき病床機能の定義について、これほどまでに議論がこじれるのか?
 
 その理由の一つは、報告制度に対する医療機関側の強い警戒感にある。先々、検討会で議論されている機能が仮に医療法上で規定されるようなことがあると、一度いずれかの機能を選択した場合、その後に別の機能に移れなくなるのではとの懸念だ。となれば、提供できる医療内容が限られる恐れもある。厚労省では、「機能別の病床規制のような仕組みは想定していない」(医政局総務課)と話しているが、現場の不安は大きい。

 さらに、この報告制度が、いわゆる「急性期」の絞り込みと連動していることも現場の反発を招いている一因といえる。国が目指す医療提供体制の「2025年モデル」では、現時点で最も機能分化が遅れている一般病床について、高度急性期や一般急性期、亜急性期などそれぞれ機能特化した形に改めることをうたっており、将来に向けて現状で最も不足している機能が「亜急性期」とされている。国のシナリオに基づけば、いわゆる一般急性期の中の一定割合は亜急性期への移行を検討せざるを得ず、報告制度で収集されたデータは進路選択を行う上での重要な判断材料になると目されている。

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