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記者の眼

原著論文をネットですぐに確認できるオープンアクセスは、難病のわが子を救う願いから始まった

2013/06/20
河田孝雄=日経バイオテクONLINEアカデミック版

 こちらの「記者の眼」コーナーでは2度めとなります河田と申します。日頃はバイオテクノロジーの専門誌「日経バイオテク」(1981年創刊)の記事編集などに携わっています。前回の本欄では、ビタミンDサプリメントの交通広告の話題をお届けしました(2013. 1. 29「ビタミンDサプリメントの広告表示とエビデンス」)。

 このような栄養素などの健康機能に関する情報を公開するための取り組みについては、その後、内閣府の規制改革会議の健康・医療ワーキンググループで「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」について議論されました。

 4月17日の第7回規制改革会議では、「個別の規制の必要性・合理性について、国際比較に基づいた検証を行う」国際先端テストの対象として「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」が健康・医療ワーキンググループで決定されました。このことについては、日経バイオテクONLINEの機能性食品メール(2013.4.19「【機能性食品 Vol.90】規制改革会議が「国際先端テスト」で一般健康食品の機能性表示の仕組み整備」)で紹介しています。

 そして6月14日、政府が安倍政権の「骨太の方針」を閣議決定し、成長戦略に「いわゆる健康食品と農林水産物の機能性表示を可能とする制度の検討」が盛り込まれました。2014年度中に実施に移す計画が示されました。

 今回の本欄では、この健康関連情報の公開と関連が深い話題として、米国における市民運動の後押しもあり、世界で医学論文公開がどんどん進んでいる状況について少し紹介します。ビッグデータ、データの洪水と表裏一体の話題です。

米国発のオープンアクセス運動
 ビッグデータというキーワードは、IT企業が事業拡大のために広めているという側面が大きいかと思いますが、医学・バイオテクノロジー分野では10数年以上前から経験してきていることです。最たるものは、ゲノム解読。ゲノム解読速度は、半導体の集積密度が2年足らずで倍増するというムーアの法則以上に増大しています。この技術革新に伴い、論文数が急増しているのは必然といえます。

 「医学関連の論文数が急増していて、キャッチアップするために町医者は論文をチェックするのに1日21時間を要する」という話はお聞きになったことがありますか。IT(情報技術)業界では有名な話らしいです。6月12日に都内で開かれた科学技術振興機構(JST)の理事長記者会見の集まりで、JSTの研究開発戦略センター(CRDS)の上席フェローをお務めの岩野和生さんが言及しました。岩野さんは三菱商事の方で、JSTのCRDSではIT分野を担当なさっています。

 米国が税金で運用しているPubMedは皆さんも日頃、頻繁に利用なさっているかと思いますが、便利ですよね。米国の偉大さを示す代表例ともいえるのではないでしょうか(参考:「リテリス:保健・医療系図書館員『みんなでつくる』デスクトップ」の解説)。

 PubMedをキーワードで検索すると、かなり最新の論文まで網羅的に医学論文を検索できます。おもしろい論文については、論文の全文を読みたくなります。しかし、論文の全文を無料で見られるのは一部です。ここ半年以内ぐらいの新しい論文については、論文全文を読むには、数十ドルなどをカード決済で支払う必要がある場合が少なからずあります。

 大学医学部に所属なさっている方々は、大学が電子ジャーナルの購読について出版社などと契約しているため、リンク先の出版社サイトで論文の全文を自動で読めるかと思いますが、このような契約がないと(当たり前の事かもしれませんが)、論文は有料です。

 一方、半年あるいは1年より前の論文だと、PubMedのリンク先で論文全文を無料で読める場合が多いです。これは、米国の政策に基づくPubMedセントラル(PMC)のおかげです。

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